目の当たり

「おっは~手下くん!」


「あぁ、おはよ」


「相変わらず元気ないねぇ笑」


「別にいつも通りだけど。っていうか体調はどうなんだよ。3日間も休んでたけど。」


「見ての通り!元気いっぱいだよ!!あ、白桃ゼリー...あり...がとね...(言えた!!)」


「あぁ、どういたしまして。」


聡志は相変わらず冷たいなぁって思っちゃったけどこういうところも好き笑



「あっ!!大丈夫ですか!!」


奴がいきなり大きな声を出して走っていった。


「荷物お持ちしましょうか??」


「ありがとうございます...いててて...」


奴は大荷物を持ったおじいさんを助けに行ったのだ。


「あいつ根はいいヤツなんだな」


「なんか言った~???」


「何でもないわ」


くそ。どうして俺は困ってる人を助けることができないんだ。奴はいち早く気づいて駆け寄っていったのに、俺は走るどころか声を出すことすらできなかった。

ダメな奴だな。


学校にて...


「なぁさとし~

智花ちゃんとは最近どうよ?」


「あ?あぁ今まで通りってか変わらずって感じだな。」


「ふ~ん

てか、お前知ってるか?智花ちゃんって前の学校退学した後この学校に転校してくる前はなんでも屋ってやつやってたらしいぞ。」


「なんでも屋?」


「そうそう。犬の散歩とか、おじいちゃんの介護とか。まぁ色々やってたんだって。

しかも、代金貰ってないってよ!!」


「無料でやってたってことか?」


「そうそう

すげーよなぁ~。かわいいし心めちゃめちゃ広いな。」


俺はこの話初めて聞いた。まさか奴がなんでも屋ってやつをやってたなんてな。

ってことは俺へのウザ絡みとかも全部演技だったのか?

てか、そもそもなんで無料でなんでも屋をやりたいなんて思ったんだろう。

誰かの役に立ちたい以外の理由は思いつかない。

そんな良心を持った奴はなんで俺にだけあんなに絡んでくるんだ?

もしアプローチだとしたら恋愛下手すぎだろ...笑


私はこの高校に転校してくる1週間くらい前までなんでも屋をやっていた。

理由?そんなの簡単だよ。誰かの役に立ちたいってのもあるけど、死ぬ前にいろんな人と関わりたかったから。お金なんていらなかった。この時から私の命が長くないことは悟ってたし、生きているうちに大人が感じてる生きがいってのを感じてみたかった。いつ死んでも後悔しないような生き方をしようってのは病気が発覚してからずっと思ってたこと。なんでも屋をやっているときはこの仕事のやりがいを感じてたし、一つの目標を達成したって感じ。そしてこの高校に入ったとき聡志に出会った。


聡志と会う。話す。これが私のもう一つの生きがいだった。



死ぬのが怖くなった。




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