5 星町三小天文クラブふたたび集合!:怪人・ミラー夫人あらわる!(前編)

1 夏休みは終わらせない!

 こないだ僕たち天文クラブは、夏休み恒例の学校に泊まり込む観測会をやったんだけど、同じ日に町内で子供がいなくなる事件があってね。

 ごはんを食べて、屋上で観測して、星の湯に行って、……というところで学校で緊急の父兄会が始まって、家に帰されちゃった。


 たしかにあの夜はなんだか変だった。みんな、星の湯に行く途中から、何にも覚えてないし。

 いなくなった子たちも、必死で家に着いたら、やっぱり何にも覚えてなかったみたい。


「俺たちの夏が、このままでいいのか」


 学校のプールに行ったらスター☆トンゴロン先輩たちがそんなことを話していた。


「観測会があんな終わり方じゃ、やりきれないよな」

「不完全燃焼でいいのか!」

「よくない!」


 僕らだって、いいとは思ってない。

 でも、もう八月も終わるし、校舎に泊まる許可はもらえないんだって。


「こうなったら」


 スター☆トンゴロン先輩はなにか思うところがあるようだ。


   * *


「え? カオルの家?」


 僕たちは星の湯でコーヒー牛乳を飲んでいるマモル先生をつかまえて、計画を話した。


「おうちの人は、いいって?」

「はい。そして、ぜひ先生にもお越しいただきたいと」

「いやあ、そうかあ?」


 泊りまでは申し訳ないので、観測会までは付き添ってくれるって。

 学校からも、こないだは残念だったから、って、正式にクラブの活動と認めてもらえたって。


「よし。

 お母さまも理解してくださったんだ。安心してみんな集まりたまえ」


 なんだか先輩、いつもと違うぞ?


   * *


「え? なにそれ?」

「なにそれ、って。

 今は八月も終わりなんだぞ?」


 やり直し観測会の当日、集合場所の公園に、宿題の束を抱えて来たクラブ員が少なくなかった。


「自慢じゃないけど、何も終わってないんだぞ」


 なんだよトモッチ。


「かあちゃんには、宿題やるのに集まるって話して来たんだよ」


 ヒロ、お前……


「あたしもまだ終わってないのがある……」


 サオリン先輩……


「宿題やってない組は、観測のあと、朝まで宿題だ!」

「おー!」


 どういう盛り上りがわからないけど、とにかくスター☆トンゴロン先輩の家に向かおう。


   * *


「なんだよ……」

「豪邸かよ……」


 そう。

 誰も、スター☆トンゴロン先輩の家に行ったことのあるメンバーはいなかった。


「俺、ここ、博物館とかかと思ってた」


 高い塀に囲まれて。正門にインターホンがあり警備会社のステッカーが貼ってある。


「俺の知っている〈家〉と違う」


 トモッチが訳のわからないことを言いだす。


「瓦かトタンの屋根があって、一階建てか二階建てなのが〈家〉だ。

 それかアパートとかマンションとか。

 ここ、一軒だけでマンション一棟くらいでかいのなんなんだよ」

「落ち着いて」


 サオリン先輩が神妙な顔をする。


「ピンポン押すよ」


 おわかりだろうが、とても〈ピンポンを鳴らす〉という雰囲気ではないんだけれど、僕らの手持ちの言葉ではそれが精いっぱいだ。

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