第2話 買い物

「まさか、同じアパートの隣の隣だったなんてね♪」

「ご縁…ですかね」

「そうかもね!」


 ニコニコと笑顔の清瀬きよせさん。

 一緒にスーパーで買い物に行っての帰り道。


「面白いなぁ~そして、世の中狭い!」


 明るい人なんだな。良いな。


棚部たなべ君」

「はい?」


 間を置いてから、清瀬さんは言った。


「あの時、すんごく暗かったけど、何かあったの?」


 直球すぎる質問にドキリとした。

 だが、不思議と口を開いていた。


「実は、清瀬さんと会う前に、フラれまして…」

「えっ」


 目を丸くする清瀬さん。

 そんなに驚かないで。

 淡々と経緯を語り終えると。


「なんか、ごめんね」

「いや、いいんです、大丈夫です」

「そう?」


 申し訳なさそうな表情に、俺は少しズキッとした。


「話したら、フラれた傷が軽くなった気がするんで」


 本当にそんな気がした。

 誰かに話すって、時に良いんだな。


「そっか」


 スッと息を吸う音が聞こえた。


「また出逢いがあると良いね!」

「はい」


 だと、良いな。うん。


 アパートに到着し、清瀬さんの買い物袋を渡す。


「ここまで荷物持ちしてもらって助かったよ、ありがとう!」

「いえいえ」


 荷物持ちなんて、お安いご用です。


「じゃあ、また」

「うん、またね!」


 それぞれ部屋に入った。



 隣の隣に、清瀬さんが…。

 また同じタイミングで会えるかな?

 なんて、な。


 さて、明日はフッたあの子もいる講義がある。

 どんな顔して行けば良いんだか。

 あー、嫌だなぁ…。

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