第2話 月と太陽

炎系の魔法の練習をして疲れ果てた。

だから今日は早めに寝たいけれど、試験があるから寝れそうになかった。

気がつけば夜の8時になっていた。自分の部屋はいつしか魔法書や呪文の書いたメモ用紙でいっぱいになっていた。

自分の部屋にいても気が滅入りそうだ…

シェリアは思い切ってほうきを持ち出して家を飛び出した。ほうきに乗るのは得意だった。風が心地よい。【フランメ】灯りを空中に灯しながら街の中心へ飛んでいくことにした。

街に着いてほうきから降りて、散策することにした。家にこもってるより外にいた方が好きだった。

「何か美味しそうなものないかな〜。何か買って元気出そうかな…」

シェリアはナイトマーケットで好きな食べ物を探した。すると…

「あ、シェリアじゃん。何か探してるの?」

突然後ろから声をかけられた。同級生の女の子二人だった。赤髪の赤い瞳のハンナと緑の髪の緑の瞳のヨゼフィーンだった。

正直会いたくない相手だった。なぜならクラスで人気者の二人は私と違って友達が周りにたくさんいた。私は周りに馴染めず孤立していて二人には冷たくされていた。

「あ…ハンナ…ヨゼフィーン…」

「どうしたの?こんな遅くに」

ハンナは笑っていない目で私を見つめた。

「リュセール高校を受験する仲間同士、試験頑張りましょ。」

ヨゼフィーンはそう言った。けれど、彼女も心からそう思ってはなさそうだった。

「ありがとう、お互い頑張ろうね…少しお腹が空いたから屋台で何か買って食べようと思って…」

頑張って話を続けようとしたけれどハンナの言葉に話を遮られた。

「そういえば、試験の日はサンクトゥスムーンの日らしいわよ。太陽のように赤くて大きな月が出て良い夜になりそうね。」

「ほうきの飛行試験は夜だから綺麗な月を見ながら空を飛べるね。100年に一度の日が試験日だなんてなんだか偶然じゃないみたい。」

そうだったんだ…サンクトゥスムーンの日が試験日なんだな…興味がなかったから、あまり考えないでいた。

「へぇ、そうなんだね…偶然じゃないみたいだね!じゃあまたね!」

私は二人から離れたくて別れを告げた。もしあの二人と合格しても受験する学科が違うから、少しだけ安心していた。

「私は、きっと大丈夫。」

シェリアはそう思いながら屋台で串を何本か買ってほうきで家に戻った。


自分の部屋の鏡の前でハチミツ色の髪の毛をとかしながら、自分の水色の瞳を見つめた。

もう少し美人になりたかったな…

そう思いながらセミロングの髪を撫でた。

試験が近いためお店には明日からは顔を出さない。勉強でもしようとしたその時…

自分の杖が光った。誰かから電話が来たようだ。杖を振りスクリーンを映し出し相手の顔を映像で見る。母からだった。

「シェリア、元気にしてた?」

「お母さん!電話ありがとう。どうしたの?何かあった?」

「試験日の前日は、お母さん仕事が忙しくて電話ができないから今日してみたの。あなたの顔が見たくて…試験がんばってね。あなたは水魔法が苦手だからそこを重点的に練習するのよ。落ち着いて試験に挑んでね…」

「ありがとうお母さん。私頑張るから。だから心配しないで。勉強もしてきたから。お仕事がんばってね。」

「そうね…シェリアなら大丈夫ね…

でも心配だわ…試験日はサンクトゥスムーンの日じゃない…神聖な日だけれど何かが起こるかもしれないし…月には強い魔力があるのよ…」

「大丈夫だよ。何も起こらないよ。楽しい事が起こってくれたら嬉しいな!」

特に何か起こってほしいわけじゃない。でもワクワクする事が起こればいいなと勝手に思っていた。

母との電話のあと私は杖を握りしめて水の魔法を使った。【ヴァッサー】

水が私の周りを回るように美しく流れた。

私の杖は短くて持ちやすい。普通は長い杖を持っているが、私はこの杖がお気に入りだった。

水魔法も大丈夫なはず!多分…

そんなことを思いながら自分の机に座り、筆記試験の勉強を始めたのであった。





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