第33話

side冒険者


さて、あそこまで言い切ったんだ嬢ちゃんたちにカッコ悪い姿は見せられないな。


 目の前の敵を見つめながら後ろで俺たちを見つめるアイツ等と出会った時のことをふと思い出す。


 俺はクルツ、冒険者だ。仲間の二人、エルフの槍使いであるウェイン、生意気だが腕は確かな魔法使いのエルゼとのパーティーはこの業界では有名な方だ。これが自惚れでないと言えるのは、数々の修羅場を潜ってきたといえるからだ。


 恩人に会うために立ち寄った村で変な奴に会ってしまった。そいつは恩人の孫娘に連れられた小動物だ。見た目はその小動物のそれなのだが冒険者としての長年の勘が奴が普通でない事を告げていた、しかし恩人の孫娘との様子を伺う限り悪い奴ではなさそうだ。あれならば恩人のいる村に害をもたらすことはないだろう。

 

 だが油断ならない奴であるのは間違えない、それは仲間の二人も同じ考えだった。特にエルゼの奴は魔力を感じ取ったとも言っていた。



 そして――――その予感は間違っていなかった。その相手である小動物の姿をしたBよ恩人の孫娘のアリスの嬢ちゃん達と紆余曲折の末に遺跡探索をすることになったのだ。


 ジョンの兄ちゃんに話を持ちかけられた時は一瞬若い身でボケているのかとも思ったがあの小動物の話と聞いて興味を持った。


 そして集合場所に行き人の言葉を喋っているのを見た時は驚きはしたが、伝えられた話を信じる事は難しかった。只者では無いのは感じていたがあまりにも突拍子がないように感じたからだ――――――しかしその考えはあの転移の石碑の時点で吹き飛ぶことになる。


 俺自身は魔法に関しての知識はからっきしだが、魔法のエキスパートであるエルゼがあれだけの対抗心をむき出しにしたのは初めて見る。


 それだけでも異常なほどは見て取れるのだが、遺跡探索中も奴には驚かされた。冒険者として遺跡探索というのは心躍るものがある、こんな場所に連れてきてもらったことの感謝と己の役割としてやってくる敵の対処を買って出たのだが希に敵を通してしまうことがあった、もちろんすぐ対応しようとしたがその前に片付けられる事が何回か。嬢ちゃんたちは気づいていないようだがアレがBの仕業であったのは間違いない。

 ここまで来るとあの話を信じざるおえないだろう。そしてあの騎士の登場だ、これは俺たちの冒険者としての意地である。

 


 




 奴が前に倒したという目の前の強敵。今回は俺たちの手で遂げて見せようじゃないか!!



 


 「まずは先制ね…雷光擊ライジング!!」


 エルゼの魔法が敵へと命中する。ダメージは無いようだが隙は出来た、その間に敵へと接近して騎士の脚部へと振りかぶった戦斧を振り下ろす。


 ガキーン!!


「まあそんな簡単には行かねぇか」

 


 斧と鎧が打つかった衝撃が返ってきた。まずは動きを封じることを狙ったのだが、今までのゴーレムであれば一刀両断に出来たものでも、この騎士が相手ではそこまで至れなかったようだ。敵の鎧を少し凹ます程度でしかない。思わずぼやいてしまった。


 この攻撃で俺の接近に気づいた騎士が、手に持つ剣を横薙ぎに降ってくる。バックステップで後退するが剣のリーチが長いために完全には避けきれない。


「ちっッ――――――!!」 


 斧を盾にするが数メートルの距離を飛ばされてしまった。ダメージはそこまで受けずに済んだようだ。すぐ起き上がって敵の方を向けばその後ろに槍を構えたウェインの姿があった。


 俺へと敵の注意が反れたタイミングで敵へと飛びかかる。 コンビネーションこそパーティーの醍醐味だろう。


 ウェインは敵の関節部に向かって槍を繰り出す。俺の攻撃を見て正面切っての攻撃は不利と判断したのだろう。


 目論見通り槍は左腕の関節へと突き刺さる――が貫くまでは至らなかったようだ。騎士が左手に持つ盾を振り回し反撃をしてくるがウェインは危なげなく避けた。 

 

 攻撃回避においてはあいつの方が俺より上手だ。


 回避の後距離をとって俺の横へと並ぶ。


「硬いな。 左腕の動きは抑えられたようだが」


 ウェインの言葉通り、騎士の左手の動きが悪くなっている。先ほどの槍の一撃は効果があったようだ・


「硬いのは分かっていただろうよ!! それよりわかっているだろ?」


 横のウェインへと声をかけて次の行動へと移る。今度は先にウェインが動いた素早い動きで動きの悪くなった左手を狙う。させじと剣を降ってくる騎士の攻撃をギリギリで回避して再び槍を関節へと突き刺す、先程と違って刺さったところで槍を手放した。


「いい槍だったから勿体無いのだがな、仕方あるまい」


 そうボヤくウェインと入れ替わりに俺は突撃する。 


 目指すはウェインの突き刺した槍、その後方を斧で叩き槍を貫通させる!!

 


 俺の追撃により槍は完全に関節を貫いて左腕は盾を持ったまま落下した。


「エルゼェ――――――!!」


 それを確認した瞬間に後方で控えていたエルゼへと合図を出してウェインとともに全速で離脱する。


「――――――我が眼前の敵に其の大いなる光を以て裁きを降せ!雷神の裁きトール・ジャッチメント!!」 


エルゼの詠唱が響き渡った――――――そしてその瞬間に俺たちの後方を光が走る!!


 そして振り返ったその場所では騎士の姿は完全に消え去っていた。エルゼの方を向けばグッと拳を突き出して合図をしてくる。


――――――どうやら予定通り上手くいったようだ。どうよ!!見ててくれたか嬢ちゃんたち!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る