第3話 手紙

小夜子とあんな所であうとは、たけるは帰宅してからも苦しんだ。小学生の頃、たけるの母と小夜子の母親はPTAの役員をしていた。それで親がママ友になっての付き合いだった。中学生になっても友達で恋人というわけではなかった。

しかし、女子の中では話す方だったので自然と趣味の話などしていた。未だに動悸がしていた。今日は安静にしていよう。


また一カ月が来て通院になった。うまくしゃべらなければと焦るが言葉にならなかった。

小夜子が事務的に話しかけてくる。

「次回はまた一カ月後のこの時間でよろしいですか。」

「はい。」

はいしか言えなかった。いろんな思いが駆け巡っていると小夜子がスッと差し出してきたものがあった。手紙のようだ。小夜子は軽く会釈した。気を遣ってくれているのだ。受け取って帰った。


帰って封を開けると


木村君

地元に帰ってきたんだね。私はずっと地元よ。木村君は東京まで行ったんだからたいしたものじゃない。体調崩してもしょうがないよ。私のことは気にせず通院してきてね。


僕はゴロ寝をして涙をこらえた。「夕食だよ。」と母に呼ばれるまでそうしていた。

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