過去の記録を紐解く

工務店さん

第01話 採点される

仕事仲間のタイル職人から聴いた話です。

彼が関わってる現場が、町から少し離れた山の中、

開発を行い、新たに住宅地を造成した中での事です。

彼の担当物件は三軒、外の庭部分に大きめのタイル

450mmx450mm貼りの仕様に成ってました。

貼った総枚数は、150枚以上弟子と共に頑張ったそうです。

その日は、最後の仕上げを明日にするとして引き上げました。

翌日現場へ行くと、真っ先に親方から怒鳴られたそうです。

彼は何で怒られてるのか解らずにいると、

現場監督さんが仲裁してくれました。

一緒に現場に入って驚いた、「人って驚くと、本当に開いた口が塞がらないものだな」と言ってました。

彼らの貼ったタイルの全部に、墨らしき塗料と筆で書いたのか、

見るからに達筆な筆使いで、全部に『○』と『☓』が書かれていたそうです。

そこの三軒は、引渡しまで残り日数が無い物件でした。

お客様に見つかるとヤバいと、その場の全員が思ったので、皆で一斉に清掃して綺麗にしたそうです。

しかし、これだけで終わらなかったんですよ。

翌日も、そのまた翌日も、達筆なイタズラが繰り返された模様。

これもね、数日繰り返されましてね、記録として監督さんが写真撮ってたんです。

数日分をまとめて見てたら気がついた。

同じなんですよね、印が付くタイルの『○』と『☓』がね。

それを確認した、親方は何かに気づいた様子、『☓』の付いたタイルを叩いて見る。

軽い音が返って来たそうです、つまり、しっかり貼れていない。

という事はですよ、これって見えない方のダメ出しなのか?と。

ここまで聞いて、失礼ですが大笑いしてしまったんですよ。

でも、彼は『冗談じゃ無いんだって、幽霊とかお化けも怖いけどよ、親方がもっと怖いんだよ』と

親方がチェックしたら、『☓』の印は見事に的を射ている、剥がして貼り直ししたそうです。

因みに何枚あったかを訪ねたら『82枚』だそうです。

何モノかは不明ですが監督さん曰く、

『ここの造成中に、石碑や祠を壊した等の報告は無いんだよな』と言いつつも、

彼には薄っすら原因が解ってたみたいです。

造成地のすぐ裏、今回の開発区分で無いエリアなんですが、無縁さんの墓所らしいんです。

結びつけるのは簡単ですが、不思議な話には違いないですよね。


そんな不思議話



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