2、明智秀頼はコントロールできない

うわぁ……。

俺が永遠ちゃんの彼女とか、常に緊張しっぱなしになってしまう。


「じゃあ、明日の休みにデート行きましょうね!」と彼女と別れてから悶々とした気持ちで机に突っ伏していた。


「いやいや、あり得ねぇだろ?俺の推しが彼女とかあるかそんなこと……?」


マ●オで例えるならピ●チ姫が俺の彼女になるみたいな話である。

正直、意味わかんないと思う。

F●7で例えるならテ●ファが俺の彼女になるみたいな話である。

もしかしたらエ●リスかもしれないけど……。

いや、そういう話がしたいんじゃなくて……。


「寝よう、寝よう!これはそういう夢なんだよ!いやー、長い夢だったなぁ!10年ぶんのボリュームある夢とかもうなんかそういうフルダイブゲームでもしてたんかもしれねーし!」


どんな容量のあるゲームだったんだろ、と現実に戻ったら確認することを頭に覚えておいて夕飯前に俺は眠りに付く。












「おっ?」


気付けば俺は明智秀頼の前世である豊臣光秀の部屋内にいた。

見覚えのあるベッド、机、パソコン、テレビと変にテンションが上がる。

なーんだ、やっぱり夢じゃないかと安心する。

永遠ちゃんが俺の彼女なわけないじゃんとか考えながらパソコンに近寄る。


「久し振りに初代『悲しみの連鎖を断ち切り』でもゲームするか……」


『悲しみの連鎖を断ち切り』と書かれたアイコンをクリックする。

『スカイブルー』のロゴマークが出て、タイトルコール。

ヨル、十文字理沙、三島遥香、深森美月、宮村永遠が描かれたタイトル画面でスタート、ロード、オプション、オマケの4つの選択肢が表示される。


「最新のセーブデータは……、美月ルートか」


なら美月ルートのセーブデータをロードする。

何回もやりこんだゲームのはずなのに、凄く久し振りな感覚に陥る。

テッテーレ、と日常シーンのBGMが流れると懐かしさのあまり涙を流しそうになる。

10年振りの原作に「うわー、なつい……。エモい……」とか言いながらクリックもしないでBGMの音で癒されていた。


「うわぁ、俺が通っていた学校がゲームになってて草」


パソコンに映っていた背景は学校の教室の中であった。

ワクテカしながらマウスをクリックしていくと美月が表示された。


『秀頼……。その……、わたくしはお前が好きなんだ……』


赤い顔をした美月がモニターに現れて気恥ずかしい……。

いや、まぁ、そう言われるのはやぶさかでもないけどね。


その美月の告白に対し、選択肢が現れる。


→俺も美月が大好きだ!

 俺から告白したかった!





「うわぁ!悩む、悩むって美月ちゃん!」

『さぁ!早く!早く決めてくれ秀頼!』

「と言われても……。ん?」


あれ?

このゲームの主人公って秀頼じゃなくてタケルが主人公じゃなかった?

そう気付いた時だった。


『秀頼さん……。私を好きって言っておいて美月にデレデレなんですね……』

「え、エイエンちゃん!?」

『私が彼女って言ったじゃないですか!?』


画面に映る美月の端に、うらめしそうな顔をした永遠ちゃんが俺を責めるようにハイライトのない目で睨んでいた……。


「ち、ちが……」













「違うんだってばああああああ!?……あ」


目を覚ませばベッドの上。

ほんの30分程度しか時間は進んでいなかった……。


「やっぱり豊臣光秀だった前世は終わっていて、この世界がフルダイブゲームなわけじゃないのね……」


くっ……。

やっぱり俺はギャルゲーの悪役じゃないか……。


「あれ?……エイエンちゃんと付き合っている事実は変わんないのか……。あああああ!?本当に!?本当にエイエンちゃんは俺が好きなの!?詐欺じゃないよね!?」


俺が推しだったヒロインの彼氏になってから、自分をコントロールすら出来なくなってしまうのであった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る