女性の執念が引き寄せた究極の幸せ
『モンスター』百田尚樹 幻冬舎文庫
著者名を見ずにこの本を読めば多くの方が書いたのは女性だと思うのではないか。
特に女性が読んだ場合、その驚きは男性よりも大きく、ところによっては呆気にとられるかもしれない。美しくありたいという思いは共通であっても、ここまでやるかという世界がここでは繰り広げられる。
生半可では到達できない美の追求。もちろんそれには大きな理由があります。
生まれながらに醜い顔に生まれた田淵和子は単なるブスの次元を超えていた。それを気にするがゆえに性格も歪んだのか、やがて彼女はある事件をきっかけにして、モンスターと呼ばれるようになり町を追われる。
それから二十年近くが経過したある日、彼女は突然故郷の町へと帰ってくるが、誰一人として気付くものはいない。それもそのはず究極の美を手に入れた彼女は、男性どころか女性からも羨望の眼差しで見つめられるようになっていたからである。
本書ではブスへの容赦ない仕打ちや、美人ならではの恩恵などが極端とも言えるタッチで描かれていて、異性はおろか同性であっても、思わずうなってしまうはず。そして、改めて美人は得だと知らぬ間にため息が漏れるかもしれない。
もちろんそれは男性も同じ。顔が与える印象はことのほか大きいと読み進めるほどに納得させられるからだ。メイク用品と違い、本格的な美の対価となると安くはない。それをどう工面し、彼女がどう変わっていくのかも興味深いところで、時に痛快、時に哀れんだりと、読み手の気持ちも変化していく。
もはやこれは単なる憧れではない。彼女の内に秘めた執念こそモンスターと呼ぶに相応しいのではないか。
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