ビブリオ📚レビュー

ちびゴリ

本を出したい。ならばまずはこれを一読

『夢を売る男』百田尚樹(幻冬舎文庫)


 素人が自ら書いた小説やエッセーを投稿する小説サイトと呼ばれるものがあります。


 実は私もサイトに登録する一人なのですが、これほどの物書きが存在するとは思ってもみませんでした。


 趣味と言いながらも、いつかは脚光を浴びて書籍化。おそらく小説をアップする大半の人は一度や二度、あるいは現在進行形で考えているはず。その思いにまるで待ったをかけるような小説が今回紹介する『夢を売る男』です。


 何といってもキャッチコピーが凄い。“一度でも本を出したいと思ったことがある人は読んではいけない”ですから。


 しかしながら、これは素人物書きを擽るフレーズで、つい読んでしまいたくなる巧みさがあります。文を書けるのだから才能がある。そんな自惚れを抱く素人相手に、夢を実現させるべく、とある出版社の編集長である牛河原がお手伝いをする。と言えば聞こえも良いのですが、その金額はあまりに法外。


 だが、ここからが牛河原の敏腕たるところで、それが真っ当であるかのように次々と説き伏せてしまう。きっと私も彼にかかれば、それを正当な値段だと信じてしまうのではないかと読みながら怖さも感じました。


 ただし、これが読むほどに痛快さを増して来たりもする。無論、ただの詐欺まがいの話だけではありません。本を出版するにはと言ったノウハウもきちんと説明されていたりして、なるほどと頷くような場面も多々あります。


 夢の実現には金がかかる。


 これは本に限った話ではないかもしれませんが、ちょっとした裏事情をのぞかせてくれる本書は読んでおいて損はない一冊だと私は強く言いたい。

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