第16話バラさんの怖い顔。
一方その頃、アリア御一行。
『マリストル!ダメだ、傷が増えている。今、背中にヒビが入った。回復魔法をかけてくれ!』
『ヒール!これに意味があるんですか?』
『分からないが、なにかの足しになるかもしれないだろう。』
現在、魂縛の縄によってぐるぐる巻きにされたマリストル。砕けてしまっては回復不能になるかもしれない。
相手はあの信兵衛、
権能は
端的に言えば脳筋であり、とにかくしぶとく、殺し辛い。
魂を殺すのは源泉を直接破壊すればいい。源泉とは記憶。記憶の破壊は単純ではないが、魂同士ならば単純になる。
自らの記憶で混濁させる。記憶を一定量流し続ければいいが、時間がどれ程かかるか分からない。源泉には囲いという防護壁があるからだ。
記憶の塊である魂は源泉の破壊で完全に死ぬ。
その源泉が誰かの記憶に完全に染まる事も死に繋がる。
他にも、再生を繰り返させ、記憶の上澄みを使い切らせる事で魂の源泉を直接壊す。これについては難しいが、不可能ではない。現にマリストルがいい例だ。
記憶の源泉さえ壊されなければ大丈夫なのだが、マリストルの職業、
権能、
『大変だねぇ。困ってるねぇ。久しぶりだねぇ。僕を追ってるんだろう〜?こちらから会いに来たよぉ。』
『っ、バラモント!』
『やあ〜、アリア。君はアイザックだねぇ。そしてぇ、死にかけてるのがぁ、マリストルちゃんかぁ。』
『・・・。どうやってここが。』
『君達さぁ、200年ぐらいかなぁ?生きてきたかも知れないけどぉ、生かされてたって自覚あるぅ?』
『なんだと?』
『まあいいやぁ。アイザック君の権能が欲しいんだぁ。それ以外は消えて良いよぉ。またぁ、生かしてあげるからさぁ。』
『貴様!バラモント!お前だけは許さない!私の、私の大切な』
『はいはい〜。彼ねぇ。僕の中に生きてるからぁ安心してぇ。"バラモント・ソフィア・バメラが命ずる。
『させるか!』
アリアは騎士然とした風貌で紅蓮の髪を靡かせた。たっと走り刃を抜き下段から上段へ振り上げる。
『嘘でしょ〜?ただの剣で殺せると思ってるのぉ?』
『舐めるな!"
『ん?おお〜。スゴイ〜。権能にはそういう使い方もあるんだねぇ。職業が権能の支配者かと思ったけどぉ、どうやら認識を改めないとねぇ。』
『な、何故。効いてないのか?』
『ん〜どうでしょうねぇ。』
『"
『それは〜、意味がなかったの覚えてないかなぁ?』
『ちっ、』
ボトボトとバラモントの前で力なく落ちる麻縄。
アリア一行は打倒バラモントを掲げた魂だが、1人では勝てない。そう考えて徒党を組んだだけだった。
そんな彼らの思考にはバラモントを追い詰めて殺す。それのみが占め、追い詰められることは想定していなかった。胎安宮に入れば侵入される事は無い。そんな想定のもと動いていた彼らにとって、現在は非常事態。
コータの記憶を読んだアリアは、胎安宮も安全とは言えない、そう思っていたが、そのすり合わせと対策に費やす時間は無かった。
彼らに、バラモントを迎撃する力は無い。4人いればもしかしたら、そんな仮定はこの場においてなんの意味もない事を、アリアは理解していた。
『経験の差かなぁ。若いねぇ。人間ごっこは楽しかったかなぁ?このまま生きていればぁ、どっかの誰かと幸せな家庭でも作るつもりだった?そんな事したらクリスが泣いちゃうよぉ〜。』
『外道が!お、お前は、お前の目的は何なんだ!私達が何をした!クリスが何をしたっていうんだ!』
『・・・。ふむ。聞いてないんだね。可哀そうで憐れなアリアちゃん。愛だのほざいている間に情報ぐらいは集めろよグズが。』
パァーーーン、大きな柏手を1つ。ここはアイザックの
『胎安宮って何で出来てるか知ってるぅ?ここも記憶だと思ってるでしょ〜?ハズレ〜。ここは〜僕達の魔力出できた空間なんだぁ〜。所有者の多少の穢れなら癒やしてくれるしぃ、回復しないケガ〜、ちょうど彼女みたいなねぇ、も治してくれる所さぁ。だから勘違いしちゃうよねぇ。僕達の一部であるなら記憶かなぁってぇ。』
アイザックがフラフラとたたらを踏み片膝をつく。
『魂だって、魔力切れは起きるよぉ?膨大すぎて試した魂なんかいないだろうけどねぇ』
『アイザック!クソ!マリストルを頼む。』
『これは、勝てない。逃げろ。』
『ハハハ。イイよぉ。用があるのはアイザック君だけだしぃ。帰りなよぉ。マリストルちゃんなんか、足手まといでしょ〜?ほらぁ。』
アイザックの前に麻縄でぐるぐる巻にされたマリストルに左手を翳す。するとアリアは咄嗟にマリストルの前に躍り出る。
『ねぇ?邪魔でしょ?手を抜いてるって分かったかなぁ?帰るなら今だよぉ?ここに残るなら殺すだけぇ。僕にはどっちでもいいけどねぇ。』
『クソが!逃げはしない。ここで戦う!』
能面の様な顔。ヘラヘラしたバラモントにはこの顔がある。くだらないとか心底どうでもいいものを見るあの顔。邪魔だなぁと思えば感慨もなく消し去るあの顔。
指をパチンと1つ鳴らす。地面から鎖が飛び出しアリアの四肢を拘束する。
『まぁ、魔法も使い方だねぇ。足留めには有効〜。コータ君は知ってるかなぁ?』
『"バラモント・ソフィア・バメラが命ずるぅ。
『う、ぅあああああ、バラモントオオオ!』
ジャラジャラとアリアが藻掻くたびに鎖が悲鳴を上げる。
打って変わって、バラモントが呪文を唱えれば、アリアの絶叫が鎖の悲鳴を凌駕する。
『アイザック君。君の権能は貰っておくねぇ。有効に使えると思うんだぁ。』
『教えてくれ。』
『?いいよぉ。何かなぁ?』
『クリスや、マリストルの親友や、俺の故郷だ。なんで殺した?他に方法はなかったのか?いや、有ったはずだ。』
『う~ん、クリスは殺さないと権能が貰えないからねぇ。マリストルの親友?誰だろう〜覚えてないねぇ。君の故郷かぁ。オオタ村、昔はエイリ村かぁ。だってぇ、親友のクリスが死んだぐらいではビビって帰っちゃうかなぁと思ってさぁ。一応ダメ押しで村も消しちゃおうかなぁってぇ。それだけだよぉ。』
『やはり、お前は殺さないと、この世にいていい人間じゃない。』
『人間じゃない。いつまで人間のつもり?お前は殺さないと?お前ら自分の事は棚に上げてよく言うよ。』
『自分の事だと?何を言っている?』
『チッ、うるさいなぁ。"
絶叫が消え去り、鎖のギリギリガシャガシャという叫びが寧ろ心地よく聞こえる。
『うん。君達は何をしているか自覚はある?人間を容易く殺せる神の如き力を持ってるんだよ?それを、派閥やら私怨やら、その間滅んだ文明はいくつある?その文明に何人人間がいた?
その間に発展出来たはずの文明は誰のせいで衰退した?君達が人間の頃のようにままごとをしてる間、生物はどれだけ死んだ?
魔物は、魔人は?どれだけ迫害されたと思う?殺せるなら救えたはずだ。現に僕たちはそれだけの力を持ってる。どうせ人間相手に試したんだろ?神様とか言われていい気になったんだろ?そんな独りで楽しく気持ち良くなるお前らは、その間に仕事もせず無辜なる人が生物が何人死んだと思う?それを知った上での質問なんだよね?』
『そ、それは、』
『知らなかった。俺が生まれる前の話だ。俺に関係ないだろう。よくある回答だ。で?その回答で死んだ人間が満足すると?僕の前の調整人達は変わったヤツばっかりが成ったみたいだけど、君達のように人間性とかルールとか茶番に興じず仕事は全うしていたよ。まぁ、一人だけ実験をやりすぎた魂なんかはいたけどね。でも、君達よりはマシさ。だから、君達の代わりに僕が世界に安寧をもたらす。だから安心して死んでくれればいい。』
『・・・。待ってくれ!分かった。従う。だから命だけは。』
『その回答も、初体験は済んでるんだぁ。今更興奮しないねぇ。』
信兵衛VSコータ
『い、今のは雷か。魔法か?』
はやっ!もう喋れるの?魂やっぱすげーな。
『"
どうだ!
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