1章①

 真っ暗でなにも見えないけど、お腹すいた!口に当たるものからなんか汁っぽい物が出ててそれにむしゃぶりつく。それをごくごくと飲んで気づいたら寝てて、そんなことを何回も繰り返す。

 何回繰り返したかはわからないけど、その内に考えられるようになってきた。うん、本能に支配された状態というものを体験できた。汁っぽい物はお母さんのお乳だったんだろうね。まだ目を開けられないから自分が何に転生したかはわからないけど、とりあえず管理人さん、いきなりすぎです(苦笑)。 最後にアドバイスっぽいものは聞けたけど、その理由は聞けなかったし。それも知能があるんだから学べってことなのかなぁ。

 しかし、生まれてすぐに本能に支配されててよかったよ。そうじゃなかったら真っ暗でパニックになってたと思う。本能って大事なんだね。これも学んだってことかなぁ。手足には力が入らないし、眼も見えてないし、これは色々できるようになるまで不安だね…。


 どのくらいたっただろう…。少し明るいのが見えるようになってきた。もう少しで目が見えるかな?


 目が見えるようになって僕が何に転生したかわかった!

 それは…猫!

 一緒にいるお母さんがちょっと猫なんだから、これで僕だけ犬ということはないはず!

 お母さんは僕から見ると大きい、汚れを落としたらちょっと高級感のありそうな猫なんだけど、痩せてる気がする…。僕以外にも兄弟がいて男の子が一匹、女の子も一匹。毛色は黄土色な感じで少しまだらのある、ちょっとチーターっぽい色合い。ちなみに僕は転生前と同じ男の子(白っぽい色)で安心した。

 お母さんはいつも優しく僕たちに寄り添ってくれている。そう。お母さんはほとんどご飯を食べに行かない。行ってもすぐに帰ってくる。

 僕たちがいるのはどこか洞穴のようなところ。誰か人に飼われているような感じもしないし、お父さんを見たこともない。お母さんはどんどん痩せていっている。このままではお母さんは弱って死んでしまう気がする。何とかしないと!僕は必死に動く練習をしようとしてるけど、でもまだなかなか動けない…。


 目が見えるようになってたぶん1週間くらい経った。僕が寝てるときはわからないけど、お母さんは相変わらず出かけてもすぐに帰ってくる。近くに飼い主がいるということもないはずだ。飼い主がいるのならきちんとご飯をくれると思う。痩せていっているということはいないということだと思う。

 僕はようやく少し動けるようになった。

 知能があるせいか他の兄妹(実際は兄か妹とかわからないけど、前世に兄がいたから男の子を兄、女の子は妹と僕が決めた)たちよりも動ける。でもまだ虫を捕まえに行けるほどは動けない。練習を頑張るしかない…。そんなことをしていると虫が洞穴の中に入ってきた。コオロギのような感じ。

 僕がよたよたと追いかけるとたまたまうまくお母さんの方に行ってくれた。お母さんは捕まえて食べている。少しは貢献できたかな?


 さらに一週間くらい経つと歯が生えてきて、まともに動けるようになった。さて、外に虫を捕まえに行こう!虫以外が捕まえられるなら捕まえたいけど、まぁ無理かな?兄妹たちはまだふらふら歩いて「みー、みー」言っている。お母さんはかなり限界に近い気がする。僕たちの糞を食べて、なん・・と・か・生きながらえているという感じな気がする。

 僕が外に出ようとすると、お母さんが『出たらダメ』といった感じで「シャーーっ」と威嚇してきたけど、僕も「シャーっ」と言って威嚇し返してみた。お母さんは驚いた感じで固まった。今のうちに外に出てしまおう。出るときは何がいるのかわからないから、視覚だけでなく嗅覚や聴覚といった五感をフルに使って注意しながら。そしてすぐに洞穴に逃げ込めるようになるべく近いところを探そう!

 幸いなことにすぐ近くに地面を歩くカマキリを発見。そっと後ろに回って、影を作らないようにして上から前足を叩き込めるようにジャンプして襲い掛かった!思ったほどジャンプはできてなかったけど、何とか背中の部分(?)を抑えることができた。

 でもカマキリは生きてる。

 …僕にできることは…「がぶっ…!」…お口を洗いたいです(涙)。

 カマキリの頭を吐き出し、胴体の部分を咥えて持って帰った。カマキリ意外と大きいよ…。なんとか洞穴に持って帰ることができ、お母さんに差し出すと、お母さんは迷った感じを出しながらも食べた。

 僕は疲れたのでお母さんのお乳を少し飲んでから寝た。兄妹たちはすでに寝ていたね…。僕がいなくても気にならないのかい…?

 こうして僕の初めての狩りは何とか成功した。

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