第13話
さて、片付いたが──
──ソラがさっきから震えまくっておるな。
任務2回目でこれだけの無残な死体を見たらそれも仕方あるまい。
まぁ、我がしたんだがな。
「ソラ──我が怖いか?」
「はい……何故──そんなに簡単に人を殺せるのですか?」
この時、父親であるジョイがソラを止めようするが、我が手で制止させる。
「ふむ、逆に何故殺してはならんのだ?」
「だって──人を殺しているのですよ!? その人の人生を終わらせているのですよ?!」
「そんな事はわかっておる。だが、誰かがやらねば被害者が多くなるだけだぞ?」
「頭ではわかってはいるのです……ですが……」
「──理解出来ない──か? まぁ、今理解出来なくてもいつか必ず──守りたい者が出来れば、わかる日が来るであろう」
「はい……」
我も別に
だが、『畏怖』のせいでそう見えてしまうのかもしれぬな。
これから──このような任務ばかりしておれば、周りからの信用は得られんであろう……。
物語でアークが孤独だったのも仕方あるまい。
これは学園でもボッチ確定だな……いや、ソアラがおるな。早く会わねば……闇が深くなる前に……。
とりあえず、ソラの事はまた考えよう。
後は捕まった人達の解放しなければならぬ。
今は保護と確認する方が先決だ。
父上は先程から動く気配が無い事から、捕まっている人達がいるのを知らない可能性が高い。
「父上」
「なんだ?」
「村人の生き残りを保護しましょう。中に20人程います」
「──!? 生き残りがいるのか?! 何故そんな事がわかる!?」
説明するのが面倒臭いな……『魔眼』や『魔術』について今まで話していないのは魔王とされてしまうリスクを減らす為だからな……しかし、必要があれば使うしかないが……。
さて、父上にどう説明するかな──
「人の気配に敏感なんですよ……呪いのせいで……」
「ん、あぁそういう事か……すまん……」
「いいえ……」
なんとか誤魔化したが自分で言ってて悲しくなる……しかも同情されとるし……。
「さぁ、中に入って救出しましょう」
「そうだな」
「「はッ!」」
洞窟の中に入り、予め『千里眼』で発見していた場所まで移動する。
捕まっていた者達を発見すると、全員がこちらに気付き怯えるようにこちらを見ている。
「父上、お願いします」
我は父上を前にし、対処するように促す。
我が前に出ると怯えられるのでな……。
「わかった。俺はクレイ・レイモンド──領主だ。救出に来た。既に盗賊は討伐済みだ。これから解放する。ジョイ、ソラ頼む」
「「了解」」
捕まっていた女性達は解放され、安堵の表情を浮かべていく。
だが──彼女達に帰る場所は無い。
「村は、村はどうなったのですか?!」
1人の女性が声を上げる。
父上もどう話せば良いか芋虫を噛んだように口元を歪ませる。
「……村は──「全滅している。間に合わなくて済まない」──アーク!?」
我は父上の話に割って入る。
おいそれと当主が頭を下げるものではない。
それに今回はどう考えても間に合う事はなかった。当主としての責任はあるが、こういうのは別に領主の息子である我であっても構わんであろう。
それに『畏怖』で恐怖感、嫌悪感のある我が前に出てヘイトを集める方が良い。
これであれば悲壮感より、嫌悪感が
予想通り、前に立った瞬間に全員が憎しみの目を我に向ける──
もう、こういう目には慣れてしもうたな……。
前世の時の方がまだマシだったやもしれぬな。部下達は元気にしておるだろうか?
我はやはり、この先も脅えられてしまうだろう。
しかし、家族やソアラのように接してくれる者がこの先現れてくれるやもしれぬ。
だからこそ、出来る事はしよう──
そんな事を考えていると次々と声が上がる。
「どうして──もっと早く対処してくれなかったんですかッ!」
「夫を返してッ!」
「息子を返してッ!」
「お父さんとお母さんを返してッ!」
「弟を──皆を返してよッ!」
最後の女の子が涙を流しながら我に平手打ちをする。この子の容姿は『千里眼』で見た時から物語でアークの暗殺者の刺客として襲った者とやはり類似する……。
紅い髪の毛の長さは肩、そしてウェーブがかかっている。瞳は茶色──名前は確か──
「君の名前は──フィーリアか?」
「そうよッ!」
今度は反対の頬を平手打ちしてくる。
そうか──なるほど、な。これで裏が読めた。
この状況から見るに既に王太子は動き始めておるな。どこかで会えれば良いが──学園まで無理であろうな……。
勢いを増す罵声に見かねたソラがフィーリア達を止めようとするが、制止させる。
その後も次々と我に石を投げながら上がる声に無言を貫く。
父上とジョイも同じく沈黙する。
こういう行き場の無い怒りや悲しみは発散させるのが1番であろう。大切な者を無くした後の虚無感から精神を病む者も多い。
虚無感を少しでも和らげる事が出来るのであれば罵声ぐらいは浴びよう。
いつかレイモンドを継ぐのであればこれも一つの義務であろうしな。
これもまた一興であろう。
しばらくすると、女性達はその場に
我が後──
こやつらにしてやれる事は──1つだけだ。
ありったけの魔力を込め、魔術陣を展開する。
──やはり、魔力が足りぬか。
袋から魔結晶を取り出す。これは魔物から取れる魔石を合成した物だ。この中に我の魔力を貯蓄してある──
これで足りない魔力を補う──
どんどんと魔法陣は光輝いていく。
「──これは、いったい?! アーク!? 何をしている!?」
父上がうるさい……集中せんといかんから今は無視だ。
魔法陣への魔力供給が終わる──
ギリギリだったな。
「──冥府の門よ──我が命ずる、愛しき人達の再会の為に門を開けよッ! ──『
冥府の門を召喚し、命令した後──死した村人達の魂が開いた扉から出て来る。
そして、魂は魔術陣から我の魔力を吸い取り人の形をしていく──
ふぅ……久しぶりに『聖魔術』を使ったな。無事成功して何よりだ。こちらの世界でもやはり我の魔術は通用する。
魔術を極めし王──魔王。
それが前世での呼び名だ。今は元魔王で、ただ強いだけの人だ。
この世界の魔王とは意味が違うようだがな。
全員が幻想的な光景に何事かと唖然としているので我は声を張り上げる。
「何をボーっとしておるかッ! 5分しか持たん、別れの挨拶をしておけッ!」
生き残った女性達は死んだはずの家族達と再会を果たし、涙を流していた。
我にはこれぐらいしか出来んが、生きる希望になれば良いなとは思う。
別れの挨拶をする村人を見ながら笑みを浮かべる──
我の出来る精一杯で少しでも前向きになってもらえる事を願う──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます