第16話 学園は危険がいっぱい?!

 学園の寮に到着し無事に手続きを終えた私は部屋(女子寮だが親から許可の降りてる執事などは入っても大丈夫)を確認する。


 小さめのワンルームくらいあってお風呂とトイレ、ミニキッチン付き。部屋の中にさらに小さな別室があってそこはお付きの執事や侍女が寝起きする部屋だと教えられた。


 つまり、セバスチャンの寝姿を観賞しほうだ……ゲフンゲフン。夜這いかけほ……ゲフンゲフン。


「いかがわしいことやりたい放題ってことね!」


「大丈夫です。ちゃんとアイリ様を鎖で縛ってベットに繋いで身動きとれなくして、私の部屋を施錠してから寝ますから」


 執事スマイルのセバスチャンは荷物をほどき、さっさと並べていく。なんとも手際がよい。


「セバスチャンってそんな性癖だったっけ?どちらかといえば○○○ピー△△△ピーの方が……モガモガモガモガ」


 途中から口を手で塞がれてしまって息が苦しいかったが、とりあえず全部言い切ったとも!


「だから、どこからそんな情報を……」


 裏公式サイトのマニアック情報に乗ってました!あ、セバスチャンの額に怒りのマークが。これは怒ってらっしゃるようだ。いかんいかん、これからセバスチャンと甘い雰囲気を作っていかねばならないのに怒らせてしまっては台無しだ。

 手が離れて大きく呼吸をすると、私はしなりを作って甘えた声を出してみる。


「でも、毎日同じ部屋にいればその内私の事もそんな目で見るようになって、お風呂上がりに裸でバッタリとか着替え中の私を見て淫らな想像しちゃうとかあるかもよ?」


 セバスチャンが冷めた眼差しで私を見る。でもそんな氷点下な眼差しも素敵なのだが。


「ポロリもあるかも☆」


「それは、ポロリできる体型になってからおっしゃって下さい」


 女子から魅惑的なセリフが出たと言うのに、にっこり執事スマイルでスルーされてしまう。おかしい、ラッキースケベ的な方が好きなはずなのに。


「どうすれば私と結婚する気になってくれるのかしら」


「だから、興味を持てるように努力して下さいと言ったでしょう」


「じゃあ、ポロリの練習すればいい?……いひゃい、いひゃいーっ!」


 無言で両頬を引っ張られた。セバスチャンはなぜ怒っているのだろうか?


「まったく……」


 セバスチャンは私の頬から指を離すと右手で私の左腕をつかみ、左手で壁に手をつくと私の体を壁に押し付けるように密着させる。


「……!」


 か、壁ドン!されてる!しかもくっついてる!


 そして私の耳元に超絶イケメンボイスで囁いた。


「そんなことばかり言っていると、お仕置きするぞ……?」


 さらには吸血鬼様モードのイケメンセリフ!こんなご褒美に耐えられるはずもなく、私の腰はまたもや砕けたのだった。


 ヘナヘナと座り込んだ私を、またもやさっと抱き上げてベットにぽいっと転がすと、セバスチャンは何事も無かったかのように部屋を片付けていく。

 すぐ無表情になったセバスチャンの横顔がちょっぴり楽しそうにも見えた。



 しばらくして片付けが終わった頃、ドアがリズムよくノックされる。セバスチャンが対応すると、ルーちゃんが入ってきた。


「アイリちゃん!わたくし隣の部屋になれましたわ。……なんで寝ていますの?」


「あ、ルーちゃん。実は将来結婚してもらおうと思ってる執事を誘惑しようとしたら失敗しちゃって、逆に腰砕けにされたの!」


「まぁ、それは大変でしたのね」


 ルーちゃんは多少ずれてるので私がぶっちゃけ話をしても全然動じない大物だ。さすがはツンデレ悪役令嬢である。そんな私たちをセバスチャンが呆れた目で見てるが気にしません。


 私がセバスチャンを簡単に紹介する。ちなみにルーちゃんにはいつものボディーガードさんがついてきていた。この人は初めて会ったときからまったく見た目が変わらない美魔女ならぬ美魔男だ。


「セバスチャンと申します。いつもアイリ様がご迷惑おかけしてしまい申し訳ありません」


「アイリちゃんはわたくしの親友ですのよ。迷惑なんてとんでもないですわ。それとこちらはわたくしのボディーガードの者です、仲良くしてやって下さいませ」


「よろしくお願いいたします」


 ボディーガードさんが頭を下げる。事情があってボディーガードさんは他の人に名前を教えることが出来ないらしい。だから昔からボディーガードさんと呼んでいる。


「こちらこそ。アイリ様が幼い時からお世話になっているようで、いつもありがとうございます」


 なんだかセバスチャンとボディーガードさんが仲良さげになっている。ルーちゃんのボディーガードさんと仲良くなってくれるのはうれしいが、BL展開だけは阻止しなくてはとブツブツ考えていると、セバスチャンからの冷ややかな視線(執事スマイル)に気づき思わず目をそらした。


 なんだか考えてることが全部バレてる気がする。吸血鬼にそんな能力無かったはずなのだが、執事になりきってるセバスチャンは未知数だ。


「そうだ、ルーちゃん!明日は入学式だし、今のうちに校内を探索しようよ」


 入学式と共にゲームがスタートしてしまうし、フラグはへし折ったけどこのゲームの強制力(イベント)は侮れないので、今のうちに隠れ場所とか闇討ち場所とか確認しておきたい。


「あ、あら、そんなに一緒に行きたいなら行ってあげてもよろしくてよ?」


 相変わらずほんのりツンデレなルーちゃんの反応に悶えそうだ。


「じゃあ、行こう~」


「あ、お待ちくださ」


 セバスチャンが止める間もなくルーちゃんの手を引きながら勢いよくドアを押し開けると、ゴン!と衝撃音が響いた。


「……ドアの正面に誰かが立ってます」


 セバスチャンの冷めた声が聞こえたが、もう少し早く教えてほしかった。恐る恐る外を覗くと足元に人が転がっている。


「まぁ!この方は……!」


 私の後ろから顔を覗かせたルーちゃんがその人物を見て驚いた。もちろん私も驚いた。瞬時にパタンとドアを閉めて視線をドアからそらした。


「…………見なかったことにしよう!」


 それは、まったく会いたくなかった人物。ドアの外に転がっていたのは攻略対象者である、双子王子のどちらかであったからだ。(どっちかはわからなかった)


 入学式は明日なのに、なんで今日ここ(女子寮)に王子が現れるのよ――――?!



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