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『あめさめだれとぐれて読み』


居間でくつろいでいた彼女が、降りしきる雨を眺めながら、そんな事を呟いた事があった。


『…何だって?』


急に訳の分からない事を言われたものだから、何かあったのかと随分訝しんだのを、良く覚えている。


何せ、相変わらず消え入りそうな雰囲気の彼女が、雨を眺めながらぽつりと、そんな事を呟くものだから、こちらとしては、今際の言葉なのか、とか、あらぬ事を想像してしまう訳である。


呆然としている私に小さく微笑みながら、彼女は、手元にあったメモ帳から紙を一枚切り取り、そこに何か書き込んで寄越した。


ー雨雨雨と雨て読みー


『何て読むの?これ』


『だから、あめさめだれとぐれて読み、だって』


『え、これで?』


『うん。江戸時代の川柳なんだって』


『へぇ。川柳ね』

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