第8話

小学6年生になり父が最近どこにも連れて行ってあげられてないからと私の大好きなディズニーランドに連れて行ってくれることになった。

ディズニーは私がまだ生まれてまもない頃によく連れて行ってくれたみたいで全然記憶にない。

CMで見かけた時はいつも両親が楽しそうに乗り物の話をしてくれた。

だからこそ行くのがとても楽しみだった。

家族で出かけることが少なくなっていたのでこれをきっかけに仲良くなればいいなと思っていた。


前日になり、車内の中で食べる食料を買いに行った。

旅行や遠出をするときは必ず飲み物をクーラーボックスに入れたりお菓子を買ったりして子供たちが飽きないよういいつも工夫してくれた。

何より、いつも高いからダメと言われるお菓子もこう言う時は買っても許されるのでスーパーの着いたらお菓子コーナーに走って行った。


家に帰り父が帰ってくるのを待った。


明日なんの乗り物を乗ろうか、何を食べようかそんな話をしたくてたまらなかった。


数分経つと父が帰ってきた。

眉間に皺を寄せて母と2階部屋に入った。

また喧嘩が始まった。

せっかく明日は念願のディズニーランドに行けるというのに何があったんだろうか。

私は、2階の部屋に一緒について行った。


母は、この日のために父がためていたお金をまた使ってしまったらしい。

祖母にお金を渡していたのに母がそれを盗んで何かに使ってしまったみたいだ。

でも、母は何に使ったかは言わなかった。

父は怒りの顔というより凄く悲しくて今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。

明日はディズニーランドに行けないと思い悲しくなった。


「子供たちのために、楽しい思い出を作ろうと思ったのになんで壊すんだ。

親としておかしいと思わないのか?」


父はずっと母に言い続けていた。

祖母が2階の部屋にきた。

封筒を持って


「お金あげるから行ってきな。

子供たちにはたくさん悲しい思いをさせてるし、明日をすごく楽しみにしてるから。」


祖母はそれだけ言ってリビングに戻っていった。

今でもあの顔は忘れられない。

凄く疲れきっていた。


なんとも言えない気持ちになり私は布団に入り眠りについた。


次の日になりディズニーランドに行った。

両親は何事もなかったかのようにいつも通りに私たちに優しく話しかけてくれた。

なんでも知っている私からすれば少しぎこちなかったけれどもせっかく祖母がお金をくれて連れてきてくれたので、今を楽しむことにした。


キャラクターと写真を撮ったり乗りたかった乗り物を乗ったり。

食べ物もすごく美味しかった。

弟は欲しいものがあると駄々をこねていたけど、私は欲しいものがあっても欲しいとは言わなかった。

言わなかったというより言えなかった。

欲しいものがあったら言いなと言われたが私は言わなかった。

子供としては良くなかったかもしれない。

子供らしくないし、親も気を遣わせていると思っていたかもしれない。


でも、どうしても欲しいものがあった。

みんなが持っているポップコーンケースが欲しかった。

自然とポップコーンケースを目で追ってしまっていたので父が買ってくれた。

それが、とても嬉しかった。


夜になり、普通は外が真っ暗なのにディズニーランドはすごく明るくて綺麗だった。

このままずっとここに居たいと思ったし家に帰らずにこのまま仲良く幸せに暮らしていたいと強く願った。


そんな願いも家に帰ったらあっという間に消えていった。

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