魔導師ユウナは無敗の女、真面目な娘と旅に出る

サトリ

1章 迷い混んだ先はRPGの世界

第1話 占いのバイト、その帰り道に

「侑名先生。ありがとうございました。」

 OLの女性は私にそう言うと占いの代金を支払って去っていった。


時間だね。

「マダム~。時間だから帰るね。」


「侑名ちゃん。今日もありがとう。また明後日よろしくね~。」

 占いのバイトは今日も大盛況で終えた。


100%当たる相性占いは伊達では無いのだ。誰が誰を好きか見える侑名に取っては相手を言い当てるのはもちろん。婚活のお手伝いまでこなす恋愛のスペシャリストなのだ。


店の前にある、人気JK占い師います!の看板が目立っている。

マダムの売り上げ狙いとは言え、学校の制服のまま働かせるのは、どうなんだろ~。そんなことを考えていたら、知らない所に出てしまった。


「あり?ここはどこだ?森?」


後ろを振り返ったが、さっきの道が無くなっていた。

「この年で迷子とは私もまだまだ、だな。」


スマホを見た。圏外って何?どこに迷い混んだのだ、私は。

また変な事件に巻き込まれたな…。


「キャー」女性の叫び声がした。

(だから相手を刺激するから…叫んだらダメなんだって。)


やれやれ助けてやるか…。近くまで行って見ると…。

金髪の外国人のシスター?のコスプレ女性が…。

ウサギ?みたいなのに囲まれている。


ウサギのわりにはでかいけど…。今は武器持ってないからな。

あれを蹴る?どうだろうか?少し重そうだからな。でも助けないと、やるか。


素早く近づいて、ウサギさんにかかと落とししてみた。

「エイ!」

「ウグゥ」大型のウサギさんって声出すの?ウサギは普通、鳴かないよ。


隙を見てシスターの人に声をかけた。

「武器持ってない?」

「はい。杖なら」

じめんに金属製の杖が落ちていたので素早く拾い上げて、ウサギさんにフルスイングした。

ドン!ウサギさんは数十メートル先に飛んでいった。


「あり?この杖。軽いのに金属バットより威力あるぞ。これなら。」

 近くにいたウサギさん数体を全部ぶっ飛ばした。


「はい!終わり~。」肉食ウサギ?そんなの日本にいたかな?


「あの~。ありがとうございました。」シスターに声を掛けられた。

「どうしたの。あんなウサギ、この杖で楽勝じゃん。」私が言うと、


「私は戦士では無いので力の数値は低いのです。」シスターが答えた。

「力の数値?ああ、腕力が無いって事ね。そんな子が一人で危ないよ?」


「仲間はみんな殺られてしまいました。」シスターは話した。

「あのウサギに?仲間は死んだの?」


「はい。あれはウォーベアっていう魔物です。うさぎではありません。」

「クマ?耳はウサギだったよね?魔物って何?」


「あなたは見慣れない人ですけど、戦士様ですか?」

「戦士では無いけど強いて言うなら占い師かなぁ~。」


「魔女…なんですか?!」シスターは突然、警戒してきた。

「そんなわけ無いじゃん。ただの一般人だよ。」


「そんなわけありませんよ!ウォーベアは討伐レベル15の強敵ですよ。」

 シスターは警戒を解いてくれない。


「討伐レベル15ってそんなに強いの?」

「城の兵士が5人がかりでやっと倒せるモンスターです。」

(その兵士…弱すぎだろ。私は数体、杖で秒殺したけど…。)


「ここはどこなの?」一番はそこだよ!

「ここは王国にある不思議の森ですよ。」


「どこ!それ!聞いたこと無いよ。」変な所に来たよ。


「平穏な王国でしたが、今は魔王軍の侵攻に遭い、国の崩壊危機です。」


(魔王軍って中二設定か!)

「あの~。お名前は~。」私は聞いてみた。


「私は白魔導師のエミリアと申します。あなたは?」

(回復役の金髪美形の巨乳ヒロインだな。ありきたり設定だよ。)


「辻占 侑名って言います。よろしくね。エミリアちゃん。」


「ツジウラユウナ?変わった名前ですね。」

(エミリアの方がマイナーだよ。)


「侑名でいいよ、エミリアちゃん。」


「ユウナさん、助けていただきありがとうございます。」

「落ち着いて喋れる所まで案内してくれない?エミリアちゃん。」


「分かりました。その前に、仲間を弔いたいのですが。いいですか?」

「近くに遺体はあるの?」


「いえ、ここではモンスターに殺られた者は力を吸収されます。遺品を回収し、集めて弔うのです。」彼女は丁寧に説明してくれた。


「なかなかハードな話だね。じゃあ手伝うよ。もし、ウサギ出てきたらぶっ飛ばしてあげるから。」


そのあと、剣とか盾とか鎧や軽装備を回収してエミリアちゃんは弔っていた。

「遺品の中で装備出来るものがあればお使いください。」


そう言われたけど、どれも重すぎて、ずっと、は持てないよ。

「持てるのこのリボンくらいだけど…。」


「そう言えば、ユウナさんは魔女でしたね。金属系の武具は杖以外装備出来ないはずです。そのリボンは身体能力を高めるはずなので身に付けて見てください。」


「そんな設定あるの!剣とかブンブン振り回せないのか…。つまらないな。」


 そう言いながら、そのリボンでポニテを作って身に付けた。


どの程度、身体能力が変わったのか試したいな。


侑名は異世界にいるこの状況を楽しむ変態だった。どうせRPGの類いの世界でしょ。その程度にしか思っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る