2013年7月1週

「「かんぱーい!」」

「ん-!このイチゴのやつめっちゃおいしい!」

「お、あやちもお酒のおいしさが」

「分かってない!と、思う。これお酒っていうよりもジュース飲んでる感覚。」

「それは危険な思考だねー。」

「もー、ちーちゃんと違ってあやちはアル中にならないもん!」

「アル中とは失礼な!アルコールを飲んで頭がふわふわしてくるのが楽しいだけじゃん!」

「でも、毎日飲んでるじゃん!」

「毎日楽しくしたいもん!」

「毎日飲んでたらアル中だよ!」

「飲まない日もあるからアル中じゃないもん!」

「じゃこの前はいつお酒飲まなかったの?」

「……先月、だった、かな……?」

「ぜんぜんやめれないじゃん!」


あー、確かに。

全然やめれないかも……。

もともと寝つきが悪かったから、お酒を飲むことでとても寝つきが良くなることを知っちゃって。

眠りが浅くなるとは言われてるけど、寝れないまま夜を過ごすストレスと比べたら。

別にストレスから暴飲が来てるわけじゃないから、いつでもやめれると思ってたけど。

こうやって休肝日のことを突き付けられると、実際やばいかもなとは思ったり。


「ねえ、ちーちゃん。すごいぽかぽかする。」

「あー、そりゃあねー。お酒飲めばそれなりに体温上がるしねー。」

「ちーちゃん、今寒い?暑い?」

「んー、暑くはないけどー。腕まくるほどじゃないかなー。」

「でもー、ちーちゃんいつもー、腕まくってるじゃーん。」

「だって、袖がぶらぶらしてるのうざいもん。」

「花もはじりゃう「はじりゃう?」恥じらう!花も恥じらう、うら若き、乙女が、腕なんてまくっちゃってー!」

「あーもー、ちょっとー!あやちー!二の腕!」

「えー?」

「触んないで―!」

「えーいいじゃーん。減るもんじゃないしー。」

「ちょっと?あやち?エロおやじだよ?」

「そんなことないよー。あやちよりちーちゃんの方がえっちだよ。」

「なんでよっ!」

「えー、だって、ちーちゃんいつもあやちのおっぱい見てるじゃん。」

「………………。見て…………なぃ。」

「もー!見たいなら見たいって言えば良いのにー。こそこそ見ようとするからあやちに怒られちゃうんだよー。」

「え、今のあやち怒ってたの?あれで?」

「あー!もう!今のは本当に怒っちゃうよ!」

「あー、ごめんごめん。怖かった怖かった。」

「もー、すぐちーちゃんは。そうやって。」


あれ、わたし、そんな見てたっけ。

自信ないな。

見てたことはあるよ。そりゃあ、あるよ。

わたしより大きいんだもん。

あやちの。

でも、そんなに見てたかなー?


「ねえ、ちーちゃん。」

「なに?」

「あやちのおっぱい触ってみる?」

「え!?」

「え?」

「いやいやいやいや。」

「え、ちょっと待って。ちーちゃん慌て過ぎじゃない?」

「そんなわけ。」

「そっか、そうだよね。慌てるわけないよね。」

「そうだよ。あ!お酒新しいの持ってくる?」

「ん-ん。いい。それよりも、触る?触らない?どっちなの?」

「えっと。」


あー、すごい話逸らしたのに戻された

これって酔ってるの?素面なの?

どっち?

てか何でわたし悩んでんの?

あやちの触りたいの?

友達だよ?

友達なんだから、タッチするくらい、なんてことないじゃん。

構えるから緊張するんだよ

え、なんで緊張するの?

あやちだよ?

あやちだから?

え、ちょっと待って

どうしよ

なんて答えたらいいの?


「なーんてね!」

「ふぇ!?」

「なにちーちゃん顔真っ赤にしてるの?そんな恥ずかしいことさせてあげないもんねー!」

「え、ちょっと、あやち酔ってるの?」

「わかんなーい。次のお酒は何にしようかなー。あ!このアセロラおいしそう!」

「あ、それわたしのー!」




喉が渇いたと思って、布団から出てしまったのが運の尽きだったのかもしれない。


私だっていわゆる思春期。

特別なわけでもなんでもない。

単純にこの年齢なら抱くあれやそれに対する不安とか期待とか喜びとか悲しみとかは持ち合わせてると思う。

そして無意識のうちに他人のそれと比較して誇ったり悲しんだりもする。

大きいから云々とか、大きくなりたいとか、あんまり強くは思わないけど、小さいよりは大きい方が良いかなとは少なからず思ってた。

だから、街中でも羨ましいなと思うことはたまにあった。

もしかしたらそこらの男の人よりも視線で追いかけてたことは多かったかもなと今にして思う。

女で良かったと思う反面、男だったらここまで露骨に見なかったかもなと思う。


そうも考えたくもなる。

こう自分のことを冷静に考えたくもなる。

こんな目の前におっぱいがさらけ出されてたら。


高校の修学旅行のときに、見かけてたから一応知ってた。

あやちは夜は着けない派だってことに。


あのときは修学旅行中だったから、着けないにとどめてたのかも知れない。

少なからず今のあやちは、全裸だった。

ナイトブラ派の私にとっては、着けないことすら多少の驚きだったのに、全裸で寝るのはもっと驚く。


人が泊まってる日くらいせめて着けないだけにしといてよ……。


今日はあやちの誕生日。

「普段飲み会でも飲まないけど、誕生日くらいは」とか言っちゃって。

何かあってはということで、珍しくあやちの家で飲んで遊んで騒いでたんだけど……。


んー。

どうしようもない?

見なかったことにするしかない?

けど。

ちょっとイタズラしてみるのもあり?

起きないよね?

起きないでね?


さっきあやちに迫られたときよりも心臓がバクバクしてる。

もう痛いくらいに心臓がうるさい。


あー。

あやちの寝相が良ければこんなことにドキドキする必要もなかったかも。

なんで布団蹴とばしてるの?

そんな寝相悪かったっけ?


見せられてる?

もしかして、見せつけられてる?

あの時すぐに返事しなかったわたしをからかってる?


からかうのはわたしで、あやちはからかわれる方なのに。

なんか複雑。

もやもやする。

なんか嫌な気持ち。


もしそうなら、このままぎゅっと、呼吸と一緒に上下に運動してるそれを握っちゃった方がいい?

それならびっくりしてくれる?

あやちをびっくりさせないと、釣り合わない。

このドキドキと釣り合わない。


もうあやちを見下ろし始めてから何分経ったのかわかんない。

もしかしたら全然時間がたってないかもしれない。

でも、さっき水を飲んだはずの、潤っているはずの喉がまたからからになってる。

たぶん結構時間がたったってことなんだと思う。


何も身に着けてないから、横に流されちゃってるおっぱい。

掬って戻してあげないとたれちゃう。

でも触ったら起きちゃう。

すっと薄目を開けて「ちーちゃん、やっぱりあやちのおっぱい触りたかったんだ。」なんてにやにやしながら、また寝るんだ。


それはすごく嫌だ。


でも本当に寝てるなら?

触るなら今しかない。


あれ?

わたしやっぱり触りたいんだ。

触りたいからこうやって悩んでるんだ。


何で触りたいの?


…………。

やっぱり答えなんて出てこない。

考えても無駄な気がしてきた。

うだうだこうやってあやちの前で立ち尽くしてるのが一番飲の無駄。


寝よ。

きっと悪い夢だ。

おやすみ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る