第26話【背中を洗ってあげている二人がエロ過ぎてヤバイんだが】

 見慣れた我が家のお風呂場のはずが、今日は景色が全く違うように見えた。


 当たり前だ。


 俺の目の前には今、タオル一枚にのみ包まれた、半裸のエルフ継母と腐れ縁女子高生が、背中を向けた状態で風呂用の椅子一脚に二人で腰かけているのだから。


 まるで異世界ラブコメの世界に迷い込んだ気分を味わえるのはいいとして......。


紫音しおんは仕方ないのはわかる。水着持ってきてないだろうし。セレンさんまで裸っていうのはどういうことかな?」

「お風呂に水着を着て入るのは邪道だと、以前読んだ漫画に書いてあったもので。紫音さんにも確認しましたらその通りだと」


 やっぱりこいつの仕業か!


 外国人に間違った日本語の使い方を教えるのと同じくらい酷いことしやがる。

 この頃の紫音の奴、俺に対するからかいがエキサイトしてきてやしません?


 湿気と汗で湿っているせいか、セレンさんの乳白色の肌がやたらと艶めかしく光り、その刺激が強すぎる光景に俺の体力はまだ洗ってもいないのに奪われ始めた。

 しかしもう一人の息子の方はむしろ元気100倍、力強さが増してきている。


「正しい入浴の作法を教えて何がいけないわけ?」

「やかましいわ」


 いつものようにツッコミで返すも、初めて目にする紫音の裸の前にどうもキレが悪い。

 こうやって見ると、紫音もセレンさんに負けず劣らず肌が白いな。

 そして二人で椅子を分け合っている都合上、お互いのお尻が半分浮いていてエロさが際立つ。


晴人はるとさ、いくら私達の裸が魅力的だからって時間稼ぎはよくないと思う」

「残念だったな。俺は今コンタクトレンズを外している」


 両目の平均視力が0.05と極端に悪い俺は、寝る時以外はコンタクトレンズを装着していないと日常生活にかなりの影響がでる。


「よって輪郭くらいしか把握できない」


 距離感がつかみにくいのが欠点ではあるが、刺激の強すぎる光景を少しでも弱体化させるため、多少の犠牲などかまっていられない。


「ちゃんと見えてる? 変とこ触ったら風呂場に沈めるから」

「私、蘇生魔法は使えないのでほどほどにお願いしますね」

「俺がすること前提で話を進めないでくれ」


 このまま二人に付き合っていたら体力が危険だ。

 俺のHPはおそらく残り半分を切っていて、レッドゾーンがすぐそこまで迫っている。

 

「いいからいくぞ。まずは紫音からな、前向け、前」


 エルフ継母とJKの背中を洗ってやる、という歓喜というか狂気に近い沙汰さたに終始付き合うつもりはない。

 手に取ったボディタオルにボディソープを数滴付け、そっと紫音の背中に触れる。  


「――ひゃん!」


 上ずった可愛らしい声と共に紫音の体が、びくんと大きく震えた。 


「......いいから、続けて」


 顔を真っ赤にして一度は俺を睨みつけるが、すぐに正面へ向き直る。


「......ん......はぅ.........んぐっ!」


 初めて紫音の口から聞く甘美なさえずりのような声に、素直に反応してしまう俺の男としての象徴。

 一応言っておくが、俺はただ命令されて背中を洗ってあげているだけだからな。

 右手からボディタオル越しに感じる紫音の肌の感触、ボディソープの甘い香りも相まって意識を持っていかれそうになる。


「ハァハァ.........晴人、気持ち良すぎ」


 終わった頃には紫音は息も絶え絶えで、とろけた表情で余韻に浸っている。

 何度も言うようだが、これはただ背中を洗ってあげただけである。


「今度はセレンさんの番ね」


 今の戦いで既にHPがレッドゾーンに到達している実感はあっても、ここで引いては男がすたる。


 負けるにわけにいかないんだ!


 もはや何と戦っているかは置いておいて、この勢いで最後のセレンさんを乗り切るしかなかった。


「は、はい! よろしくお願いします」


 紫音の姿を見て動揺したのか、向けられたセレンさんの背中からは明らかな緊張感が漂っている。

 今更遅い。二人して人畜無害な男子高校生をからかった罪の重さ、とくと噛み締めるがいいさ。


「......!? これは......はぁん!」


 セレンさんも紫音同様、少し背中を洗ってあげただけで肩を大きく震わせた。

 紫音の乱れ方も凄かったが、セレンさんは――激しかった。

 

「そこ......いいっ! .........あ、ぐっ......ふぅん!」


 俺の一挙手一挙手の度に大きく体は乱れ、セレンさんはみるみるうちに肩で息をし始めた。

 清楚さは微塵も消え、妖艶さ溢れるエルフ継母がそこに存在する。

 最後にもう一度だけ言っておこう。

 これは背中を洗ってあげているだけのことである。


「......ハァハァハァ......」


 背中をシャワーで洗い流し、乱れに乱れたセレンさんは軽く放心状態に陥っていた。

 心配して声をかけてみると小さく「はい」とつぶやき、ゆっくりと頭を垂れた。


 セレンさんがこんなにも背中が敏感だったなんて。

 俺は罪悪感を感じながらも、肉体的な弱点を知ったことへのどこか優越感めいたようなものも感じていた。


 自分のHPも下の息子のHPも当に限界を超え、役目を終えたのでそろそろ引き上げようと腰を上げようとした瞬間だった。


「――晴人、ついでに頭も洗って」


 ジト目の紫音が、俺のTシャツの裾を掴んで引き止めた。


「はぁ!? お前、なんでそこまで!?」

「うっさい! お客様の声は絶対なんだから!」


 裸眼でも半裸で密着するもんだから紫音の胸の谷間がモロに見えて、もう一人の息子が息を吹き返した。  


 ああもう! どうなっても知らねぇぞ!


 案の定、紫音は頭の方でも、俺の手によって再び快楽の沼へと滑り落ちるのだった。


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