第34話 キラービークイーンとの闘い

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 キラービークイーンが叫び声を上げ、その獰猛な牙を以って襲い掛かってくる。


「くっ!」


 キィン! 甲高い音が響いた。俺は『ミスリルブレード』を以って、その攻撃を受け止める。


「ロキ様!」


 メルティが俺の身を感じ、炎を放とうとする。


「使うな! メルティ! 森の中だって言っただろ!」


 俺は制する。メルティの炎は広範囲攻撃だ。故に使い道を誤ると山火事を招きかねなかった。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 フレイアが剣を以ってキラービークイーンに斬りかかる。鋭い剣撃がキラービークイーンに放たれたはずだ。しかし、不意打ちのように放たれた攻撃にも関わらず、キラービークイーンは糸もたやすく、その剣を毒針のように受け止めたのだ。


「くっ……こいつ」


「気を付けろ! こいつの視覚領域は人間の比じゃないっ!」


 そもそも相手は人間ではない。怪物(モンスター)だ。人間の常識で語れるような存在ではなかった。死角などというもの、ないものだと思った方が良いくらいだ。


「は、はい! そうですね」


「……ううっ……一体どうすれば……」


 メルティが右往左往する。その時だった。キラービークイーンがその刃の矛先をメルティに向けたのだ。


「危ない、メルティ!」


 攻撃を封じられているメルティは成す術もなかった。強烈な毒針攻撃が無防備なメルティに襲い掛かっていく。


「ぐっ!」


「ロ、ロキ様!」


 俺は慌てて身を乗り出し、メルティを庇った。


「ぐ、ぐあああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 背中に痛烈な痛みが走る。あのキラービークイーンの強烈な毒針攻撃をモロに食らったのだ。


「ロキ様っ!」


 心配そうにフレイアが駆け寄ってくる。


「……大丈夫ですか!? ロキ様。も、申し訳ありません。私を庇ったばかりに……」


「心配するな……こんなもの大した事ない。後でポーションでも飲めば何とかなる」


 俺はそう告げた。


「え? でも、なんで……あのキラービークイーンの毒針には強力な毒効果があるはず……」


「それもそうだが……それはこいつのおかげだ」


 俺はアクセサリ『冥府の護り』を見せる。


「……ロキ様。それは……」


「ああ。こいつはあの地下迷宮(ダンジョン)で手に入れた物だ……。このアクセサリがあれば殆ど全ての状態異常変化を防げる……例外もあるかもしれないけどな」


 俺は立ち上がる。針によるダメージは負ったが、問題なく闘えるだろう。問題の毒による効果はアクセサリの効果で防げたのだから。


「……そうですか。それは良かった」


「俺には毒は効かないが、それでもキラービークイーンは強敵だ。気を引き締めて闘っていくぞ」


「「はい! ロキ様!」」


 こうして俺達とキラービークイーンの闘いは続いていくのであった。

 

 ◇


 キラービークイーンの毒針攻撃が効かない俺が盾となり、その隙にフレイアが攻撃するという、単純(シンプル)だが、効果的な戦略により、俺達はキラービークイーンを着実に追い詰めていった。


 目に見えてキラービークイーンはボロボロになっている。最初のような覇気はない。相当に体力(HP)を失っているのだろう。最後の時は近かった。


 俺達が最後の詰めに入ろうとした時だった。


「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」


「うっ! なんだっ! この叫び声は!」


 キラービークイーンは突如、強烈な叫び声を上げた。それはまるで断末魔のような悲痛な叫びであったが、それでもまだ絶命たらしめる事ができるだけのダメージは与えていない。キラービークイーンの体力(HP)の余力は多少なりあったはずだ。


『『『『ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!』』』』


 その叫びがした後、キラービークインから無数のキラービーが飛び出してきた。さっきの絶叫はキラービーを呼び寄せる為の合図だったのだろう。


「な、なんだ!」


 無数のキラービーが俺に襲い掛かってきた。いくら『冥府の護り』により、毒状態にならないとはいえ、これだけ沢山のキラービーの攻撃を受けたら無事では済まない事だろう。


「メルティ!」


「はい、ロキ様!」


 俺とメルティは以心伝心だ。言葉で説明せずとも、既に伝わっていた。


 メルティは魔剣レーヴァテインの姿に一瞬で変身(トランス)した。そして、俺はその魔剣を手に取る。

 

 生じたのは炎の壁(フレイムフォール)だ。俺の身体を炎が護り、襲い掛かってきたキラービーの群れを悉く焼失させる。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺はキラービーの群れによる攻撃をやり過ごすと、キラービークイーンに斬りかかった。


「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」


 斬ると焼くの同時攻撃により、キラービークイーンに致命傷を与える事となる。キラービークイーンは断末魔を上げて果てた。その体は真っ赤に燃え盛り、消失していったのだ。


 そして、キラービークイーンはアイテムをドロップした。輝かしい結晶石だ。

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『キラービークイーン』の結晶。

 キラービークイーンを倒した証。換金用アイテムでもある

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「ふう……」


 これでキラービークイーンは倒せた。ひと段落だ。後はキラービーの巣を破壊するだけだ。


「じゅるり……」


 メルティは涎を拭った。


「どうした? メルティ」


「この巣から甘い匂いが沢山しててくるんです」


「ハチミツだな……」


「ハチミツですか? 取っていってもいいですか!?」


「別に構わないが……」


「わーい!」


 メルティは喜んだ。こうして俺達は破壊するより前に、キラービーの巣から『ハチミツ』を入手していった

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『ハチミツ』×10

 キラービーの巣から採取した『ハチミツ』。とても甘くておいしい食材である

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「それじゃあ、目的も達成したし、とりあえずはクラリスの家まで報告に行くか。冒険者ギルドへ行くのはその後でいい」


「そうですね。そうしましょう」


 こうしてキラービーの巣を破壊した俺達はクラリスの家に戻っていくのであった。





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