第20話 道中にてメルティと初めての闘い

 魔剣レーヴァテインの成り代わりであるメルティが、俺の仲間になった。


 彼女が人間形態の時には、残念ながら俺は魔剣レーヴァテインを装備する事は出来ない。当然と言えば当然だが……。魔剣が女の子になっているのだから。


 そういうわけで俺は仕方なく、今まで装備していた『アダマンタイトブレード』を引き続き、装備する事になった。


 地下迷宮(ダンジョン)での道中だった。俺達の前に数体のミノタウルスが姿を現す。


 牛の顔をした、怪力の巨人達だ。巨大な斧で装備をしている。


 今まで相手にしてきたのはどちらかというと、ボスモンスターに値するような相手が多かったが、ミノタウルスはそうではない。

 だが、決して雑魚モンスターとして侮れるような相手ではないのは確かであった。


高いHPと防御力、それから怪力から放たれる斧の一撃は食らったら一たまりもない。


「ロキ様、ここは私にお任せください」


「メルティ……大丈夫なのか?」


「はい! この程度の相手ならば私一人でも何とでもなりますっ!」


「……そうか。なら任せたぞ! メルティ!」


 考えた末に俺はメルティに任せる事にした。なぜなら彼女はこれから長い事付き合っていくパートナーになる事は間違いなかったからだ。


 だから俺は魔剣としての彼女の性能だけではなく、人間形態の時の実力も知っておく必要があった。


 これは良い実戦テストになるだろうと考えたのだ。


「はい! がんばりますっ!」


 メルティは数体のミノタウルスと対峙する。


「「「グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」」」


 数体のミノタウルスが唸り声を上げた。そして、メルティに猛然と襲い掛かってくる。斧を振り上げ、メルティ向かって振り下ろした。


 ドスン!


 ――しかし。その場には素手にメルティはいなかったのだ。攻撃は空振りに終わる。


 メルティはその時、既に天空に舞っていたのだ。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 メルティが叫び声を放つ。その両手には燃え盛る、真っ赤な炎を宿していた。放とうとしているのは魔導士が放つような、火炎魔法の類であろう。


「『煉獄』!」


 放たれた紅蓮の炎は数体のミノタウルスを一瞬で焼き尽くした。


「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」


 数体のミノタウルスが断末魔を上げ、果てた。


「ふう……やりました」


 メルティは満足げだ。


「良くやった……メルティ。流石だな。あの数のミノタウルスを一撃でだなんて」


「ふふっ……これくらい当たり前です。大した事ではありません」


 メルティはそう言いつつも鼻高々といった印象であった。


 ぐう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。


 その時の事であった。長い腹の音が鳴ったのである。ちなみに、俺ではない。間違いなく、メルティのものだ。メルティは恥ずかしそうに顔を朱色で染める。


「すみません……ロキ様。少し運動したので、お腹が減ってしまいました」


「運動って……」


 メルティにとって、先ほどのミノタウルス数体との闘いなど、ただの運動に過ぎなかったのだろう。末恐ろしい女の子だ。普通の人間ではないのだから当然かもしれないが……。


「……何か、食べる物はないでしょうか?」


「食べる物って言われてもな……」


「あっ! そうだっ!」


 メルティはぽんと手を叩く。何かを思いついたようだった。


「目の前にちょうど良く焼けた牛さんがいるじゃないですか!」


 目を輝かせ、口から涎を垂らす。


 『ちょうど良く焼けた牛さん』とは、当然先ほどメルティに焼かれたミノタウルス達の事だ。


 食えるのか? ……まあ、牛みたいなもんだから食えなくもないだろうけど。


「……待っていろ、メルティ。そのままじゃ食べづらいだろ。今斬ってやる」


 スパ、スパ、スパ。


 俺は剣を以って、ミノタウルスをカッティングした。ちょうど大きめのステーキサイズに何枚か。


「おおっ! 流石はロキ様。素晴らしい手際です……では頂きますっ! はむっ! がつがつむしゃむしゃ!」


 メルティは夢中でステーキ肉に食らいつく。こうしてみているとただの食べるのが好きな普通の女の子にしか見えない。少々大飯ぐらいが過ぎるが。何枚もあった大き目のステーキが一瞬でなくなっていく。


「……旨いのか?」


「は、はい! 脂身があまりなく、とってもおいしいですっ!」


「……本当か?」


「よろしければロキ様も食べてみませんか?」


 メルティは俺にステーキを近づける。


「安心してください。毒なんて入ってません。毒見ならちゃんと私がしました。はい、あーん」


「あーん」


 俺はミノタウルスのステーキを頬張った。メルティが言うように、脂身のない上質のステーキのようで普通においしかった。食糧として、いくつか持っていこう。


「どうでした?」


「ああ、おいしかったよ」


「そうですか……それは良かったです。なにせ、焼き加減が最高でしたからね」


 メルティは胸を張った。


 こうして俺達はミノタウルスを倒し、ステーキ肉を食糧として手に入れたのであった。


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ミノタウルスのステーキ肉×10


脂身のない上質なステーキ肉。元のモンスターを想像しなければ普通においしく頂ける。ボリュームもあり、すぐに満腹になれる一品。火加減もちょうど良い。

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