MK5

今福シノ

マジでキレる5秒前!

 いっけなーい! 遅刻遅刻!


 私、星野・ムーン・セリーナ。どの宇宙にでもいる普通の女の子。キラキラ光る星をながめるのが大好きな高校1年生。


 でも昨日は夜更かししちゃったせいで、学校に遅れそう。朝ごはんだって食べてるよゆーがなかったから、口に宇宙食パンをくわえながら宇宙原付バイクを走らせて大急ぎ。私、超ピンチ!

 今日は1時間目から小テストがあるから絶対に遅刻できないのに、どうしよう。


「こうなったら……」


 私はハンドルの中央についてある真っ赤なスイッチ――秘密兵器のワープ装置に指を置く。お母さんには危ないから使うなって言われてるけど、遅刻と小テストには代えられない。

 ポチっとな!


 直後「きゅんきゅんきゅん!」とエンジンが音を立てはじめたと思ったら、一瞬で景色が変わる。暗い宇宙空間の先に、私が通う天王星立西高校の校舎が見えてくる。やった! さすがはワープだね。


「これならよゆーで間に合うじゃん」


 スピードを上げて学校まで一直線、と思ったら――


「きゃっ!」

「うわっ!」


 宇宙原付に自動急ブレーキがかかって私の身体は揺さぶられる。


「いたたた……」


 もー、いったいなんなの!? 


「いてて、気をつけろよな」


 すると、私の前にいたのは同じく宇宙原付に乗った男の子だった。そっか、これとぶつかりそうだったから自動ブレーキがかかったんだ。

 目つきは悪いけど、ちょっとかっこいいかも……。


「あ、あのすみませ――」

「なんだよ、急に飛び出してきて」

「え」

「どうせ遅刻しそうで、周りも見ずにワープを使ったりしたんだろ。あーあ、これだから太陽系はしっこの田舎いなか宇宙は嫌になるぜ」

「なっ」


 なによーっ! 人が謝ろうとしてるのに!


「そこまで言わなくてもいいじゃない!」

「ほんとのことだろ。怒るってことは図星か?」

「そっ、そそそんなことないわよ!」

「はいはいわかったわかった。って、おっと。急いでるんだった。じゃーな。せいぜい事故って免停にならないよう気をつけろよ」

「あ、ちょっと!」


 話はまだ終わってないんだから、と言おうとしたけど、彼は宇宙原付を走らせて遠くへ行ってしまう。ひとり暗い宇宙空間に残される私。

 もー、なんなのよ。アイツ!


「ってヤバ! 私も急がないと!」


 エンジンをかけなおして、私は学校へと急行したのだった。



 ☆☆☆



「――ってことがあってさあ」

「あはは、なにそれマンガみたいじゃん」

「もー笑いごとじゃないってば」


 宇宙原付を飛ばしまくった結果、無事ホームルームまでに学校にたどりつくことができた私は、クラスメイトのミチルに今朝の愚痴をこぼしていた。


「そんなことよりさー」

「えー、私の最悪の朝がそんなことー?」

「過ぎたことをくよくよ言っててもしょーがないでしょー? で、今日なんだけど、転校生がやってくるんだって」

「そうなの?」

「しかも、イケメンなんだって」

「マジで? それちょーアガるじゃん」


 イケメンかあ。きっと今朝の口が悪い男の子みたいなのじゃなくて、紳士的な人なんだろなあ。私がぶつかっても、優しく手をさしのべてくれる、みたいな。


 ワクワクしていると、先生がホームルームを始めて、ミチルの情報どおり転校生の話をする。そして「入ってきなさい」という言葉のあとに男の子が入ってくる。


「はじめまして。茨城・クリスタル・マモルです。内太陽系から引っ越してきました。みなさんよろしくお願いしま」

「あーっ! あんた!」

「おっ、お前!」


 なんとそこにいたのは、今朝ぶつかった口悪男子。転校生ってコイツのことだったの!?


「なんだお前ら知り合いなのか。なら、席は星野の隣がちょうど空いているし、そこに座ってくれ」

「なっ」

「えっ」

「それと星野。茨城君はまだここに来て日が浅いから、学校のことだけじゃなくてこのあたりのこともいろいろ教えてやってくれ」


 ちょ……!


「ええええええっ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る