【フワーデ図鑑】木陰(もっかげ)

【名称】木陰(もっかげ)


【外見】

https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/16817330668092344707


【概要】

 「木陰のささやき者」とも称されるこの妖異は、人間大の木彫り人形です。木製の肌はよく観察すると木目が動いていることに気付くでしょう。その顔は無表情で、深く掘られた眼窩の奥は黒く塗られ、見る者に深い恐怖を植え付けます。


 この妖異は森の木々を自在に操ることで、迷い込んだ者を更に深い森の奥へと誘います。そのささやき声は聞く者の三半規管に影響を与え、方向感覚を狂わせると云われています。


 伝説によると、この怪物は木こりが神秘的な木で彫った人形から生まれたとされています。その人形はやがて森の中を徘徊するようになって、村人たちを恐怖に陥れました。同じころ、森に入り込んだ村人が行方不明になる事件が多発するようになります。事件を恐れた多くの者が村を去り、最終的には村が消滅しました。その後もこの妖異は徘徊を続け、森に迷い込んだ者にささやいて、深い森の奥へ誘い込んでいると噂されています。


 目撃情報の多くは夜間ですが、日中の目撃情報もいくつか存在しています。


【木こりの伝説】

 昔々、ある小さな山村に、熟練の木こりが住んでいました。木こりは森の奥深くで脈動する神秘的な木を見つけます。木の美しさに魅了された木こりは、その木を削って人形を彫ることにしました。

 

 木こりは、幼くして亡くなった愛娘の形をしたこけしを彫り始めます。彼は昼夜を問わず、娘への愛情と深い悲しみを込めて人形を掘り続けます。


 彼の深い情を感じて、木に宿っていた古い精霊が目を覚ましました。古い精霊は、木こりが彫ったこけしに命を吹き込みます。木こりは、娘の姿をしたこけしによって慰められました。しかし、こけしはやがて不気味な行動を始めます。毎晩、家を抜け出し、森の中を徘徊するようになったのです。


 村人たちは、夜な夜な森から聞こえるささやき声や、木々の不自然な音を恐れるようになりました。森に入った村人が行方知れずになることが多くなると、木こりも、自分が作った人形に対して恐れを抱くようになりました。しかし、娘への愛情からこれを手放すことができず、村は毎晩のように怪異に悩まされるようになりました。


 やがて、木こりは人形を森の奥深くへ隠してしまいます。しかし、その後も、毎晩のように森からは、ささやき声が木々の怪しい音が響き続け、村人たちの不安が消えることはありませんでした。そしてついに村から去る者が出るようになりました。木こりは、村に不幸を招いたこと悔やみながら、最後は深い悲しみに沈んでこの世を去りました。


 人形はその後も森の中でささやき続け、やがて「木陰のささやき者」として、今もなお森の中でささやき、迷える旅人を惑わしていると言われています。


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