【フワーデ図鑑】ヒトデピエロ

【妖異の名前】

 ヒトデピエロ


【概要】

 星の精霊が長い間、大量の生血を吸い続けると、最初は山蛭のような形態を得る。そこからさらに時を経ることで最終的にヒトデのような姿に変態すると言われている。ヒトデの形態となる頃には、数多の犠牲者たちを襲い続けてきた経験によって、生物にとっては最悪の狩人に成長しているはずだ。


【画像】

https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/16817330667277512355


【外観】 

 見た目は人の身長ほどある海洋生物のヒトデのような姿をしている。その派手な体色が道化師のようにも見えることから、ヒトデピエロと呼ばれることが多い。呼称としては他にも「星の道化師」「跳ね寄る死」「嘲るモノ」といったものが古文書に記載されている。


 一見すると身体の中央にある巨大で凶悪な口に目が向くが、それは最終的に犠牲者を摂食するための器官でしかない。この口が脅威となる頃には、犠牲者は既に死亡しているか、死を逃れることができない状況となっているはずだ。


 本当の脅威は、中央から伸びるヒトデ上の触腕である。腕には小さな無数の触手が体毛のように生えており、一度、吸着されてしまうと、通常の人間の力ではまず振りほどくことはできない。もし逃れるとしたら、吸着された部分を切断するしかないだろう。


 吸着された際に、自分の身体を切り落とす判断は速やかに行う必要がある。触手に付属している赤い球体状の器官は、近くで見ると凶悪な赤い針が数多く伸びているのを確認することができるだろう。これは犠牲者の血を吸収するためのものである。


 その吸血の力は、犠牲者の命をすみやかに奪うことができる程、強力であると言われている。だが、すみやかな死を得られることはまずない。他の多くの妖異にみられるように、この怪物も犠牲者を苦しめた末に死に至らせることを何よりの喜びとしているからだ。


【詳細】

 ヒトデピエロの呼称は、その外観的特徴だけではなく、その行動も捉えて付けられたものである。


 これまでこの存在が確認された場所の多くは、多くの場合、深い山奥や夜の深い森となっている。山奥の道を歩く旅人は、周囲の景色と異なる大きな色の存在を見た時、まず違和感を感じるだろう。


 その黄色い何かは、旅人に気が付くと、奇妙な動作を伴なって近づいてくるはずだ。左右にピョンピョンと跳ねながら、こちらに近づいてくるのを見た旅人は、その姿が道化師に似ていると気が付くかもしれない。


 この段階で全力で来た道を掛け走って戻れば、まだ助かる可能性はわずかにあるかもしれない。


 ただ多くの人間は、黄色い道化師の異様な姿と、凶悪な表情に足がすくんでしまうことがほとんどだろう。


 もし逃げるという選択が取れた場合でも、それで安心することはできない。そこから黄色い道化師の執拗な追跡を振り切る必要があるからだ。


 ヒョコヒョコと滑稽な動きで、どこまでも追いかけてくる姿は恐怖でしかない。しかも、狂気に陥った人間のような哄笑を上げながら、何時間も追いかけてくる。


【対処】 

 銃火器等の武装が十分に用意された状況で、ヒトデピエロ単体を相手にするのであれば、それほど脅威ではない。触手に捕らわれない距離を保って、攻撃する手段を持っている場合も同様である。


 ただし、ヒトデピエロが恐ろしい狩人であることを忘れてはならない。特に森や山の中においては、なおさら警戒度を高める必要があるだろう。こちらの火力に頼って、深追いしてしまうと、逆に罠に嵌められていたということにもなりかねないからだ。

 

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