第2話 灯と光彦

 「光彦みつひこ!」

 あかりが、やや猫背で帰ろうとする光彦に声を掛けた。


 「・・・ああ、下條さん」

 『しもじょうさん』が『しもじょさん』に聞こえる。

  


 「夫婦漫才めおとまんざい、やることになっちゃったね」


 「うん」


 「私、結構張り切ってるんだ!」


 「下條さんは、水沢さんとペアで漫才することが多いよね」


 「愛理と私は1年の時から、お互いの家に泊まって、

ネタ作りしてきたからね。

 『七夕』は新風吹き込んだ方がいいよねって

お互い、そういう風に話してたの」


 「ふうん」



 「光彦、これから予定ある?」


 「今日はバイト休みだけど」


 「これから、空いてる?」


 「んん、ああ」



 2人は大学から少し歩いてコンビニに寄って、

公園のベンチに座って食事をすることにした。



 「私は、笑いが人の病気を治すこともあるって、

信じてるの」


 「・・・」

 光彦は隣でモシャモシャとおにぎりを食べている。

 

 「笑うことで免疫力が上がるの。

私のお婆さん、肝臓がんなんだけど、

お笑い芸人さんが出てる面白いバラエティ番組を

見た後は、体調が良くなる感じがするんだって」


 「ああ、それ聞いたことある。

免疫力が上がるっていうのは

科学的に立証されてるみたいだね」



 「面白いネタ作り、早く始めたいな」


 「明日はバイトだけど、明後日なら空いてるよ」

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