鬼刑事ぶらり旅

小波ここな

第1話 鬼刑事。華麗に転属。

 岡山の鬼と呼ばれた、鬼刑事が無事に東京から岡山に転属された!

 鬼刑事は土産物に適当なおやつを買い、新幹線に乗り込んだ。


 眠気からあまり覚えていないが、新幹線で悲鳴が聞こえた気がした。

 起きた時には岡山県。そしてなんだかんだ事件が起きていたようだ。乗客にそれとなく聞いた話では、新幹線に猿が現れて暴れたそうだ。鬼刑事はこの怪事件に着手しようと考えたが何ぶん手荷物が多いため、放置することにした。

 新幹線を降り、駅に出ると、後輩の青山くんがにこやかに出迎えてくれた。ナイスタイミングでのお出迎えに、鬼刑事は疑心暗鬼になりながらも冷静に聞いてみた。


「青山くん。どうやって俺の居場所を悟ったのだ?」

「なんとなくですよ。勘ってやつです」


 青山くんは駅のコンビニで買ったおむすびを食べながら答えた。

 鬼刑事は青山くんに対して更に疑心暗鬼になったが、新幹線から猿の着ぐるみを着た、多分男が両腕をつかまれて歩いてくるのを見てぼそっとつぶやいた。


「事件解決だな」

「え? 何がですか」


「なんでもない。さあ、とりあえず桃太郎さんを拝みに行くぞ」

 言いながら鬼刑事と青山くんは駅にあるケーキショップでケーキを一つずつ買い、岡山駅にある桃太郎像に歩き出した。



 桃太郎像につくと東京を思わせる人並みがあり、鬼刑事は疑心暗鬼になった。


(なんで平日にこんなにも人がいるんだ…穏やかな町はどこに消えたのだろうか)

 鬼刑事は考えた。これはひょっとして事件の前ぶれではないかと。そして青山くんに向かって叫んだ。


「青山くん! 事件が起きるぞ! とてつもないやつがな!」


 

 そして鬼刑事は桃太郎像前を、ぶらり、ぶらぶら…ぶらり、ぶらぶら…歩き始めた…!


 青山くんは鬼刑事の歩みを見て、鬼刑事ぶらり旅か…とつぶやき、ジャケットのポケットの中にあるおむすびを取り出して、封を切り、一口ほおばった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る