第55話

☆☆☆


悪魔山へ出発するのは、次の休日ということになった。



それまであたしたちは悪魔山への恐怖を消すため、SNSやサイトへの書き込みを進めていた。



悪魔山の夕焼けの綺麗な景色とか、昔の伝染病のせいで悪魔山と呼ばれるようになったとか。



とにかく、読んだみんなが怖くないんだと思えるような事を書き込んだ。



「昨日、1年3組の佐々木達樹君がいなくなった」



ホームルーム開始直後、先生が神妙な面持ちでそう言った。



まだ田中君が見つかっていない教室内で、ザワメキが起こる。



「隣県での行方不明も続いているし、通学途中や休日出かける時には気を付けるよう

に」



「行方不明の原因はわかってないんですか?」



そう聞いたのは夕夏だった。



夕夏の友達も、まだ戻ってきていない。



「それは警察が調査中だ」



先生はそう言い、早々に話を打ち切ってしまった。



あまり大事にしたくないのが見て取れた。



「この前、友達の家のお爺ちゃんもいなくなったんだよね」



「行方不明ってこと?」



「うん。お爺ちゃんまだ元気だったのに帰って来なくなったの」



「それって田中君や佐々木君の事件と関係してるのかな?」



休憩時間に聞こえて来るそんな会話にいたたまれなくなり、あたしは廊下へ出た。



窓を開けて大きく息を吸い込む。



すべての行方不明事件が自分のせいじゃないかと思えてきてしまう。



「大丈夫?」



あたしの様子を気にして梓がそう声をかけてきた。



「うん……」



返事をするものの、あまり大丈夫ではなかった。



次は誰がいなくなるのか、もしかしてあたしの大切な人が狙われるんじゃないか。



そんな不安で押しつぶされてしまいそうだ。



梓の手を握りしめて少し安堵感を覚えた時だった「友里」と呼ばれて振り向いた。



そこに立っていたのは照平だ。



「照平……」



「ちょっと話があるんだけど」



この前お父さんの行方不明事件について聞いたからだろう。



あたしは頷き、梓に断りを得てその場を移動したのだった。


☆☆☆



「最近起こってる行方不明事件、10年前の事件と関係してると思うか?」



そう聞かれて、あたしは大きく息を吸い込んだ。



やっぱり、その質問だったか。



あんな話をしたばかりだから、気が付いてもおかしくなかった。



「わからない。でも……可能性はあるんじゃないかと思ってる」



あたしは思い切ってそう言った。



恐怖を払拭するために頑張っている今、照平に本当のことを伝えるのは気が引けた。



だけど、照平はあたしたちの味方になってくれると感じていた。



「やっぱりか。友里たちが俺の親のことを気にしてた矢先の事件だもんな。なにかあると思ったんだ」



「ごめんね、黙ってて」



「いいけど。話てくれるんだろ?」



そう言われて、あたしは頷いた。



「時間、かかるけど……」



「構わない。俺も知りたいんだ。自分の親に何が起こっていたのかを……」

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