第38話

けれど、ここから車で1時間の場所へ引っ越すと、今まで通りにはいかなくなる。



電車やバスを使っての通学になると、透たちとの距離が今以上に離れてしまいそうに思えて、怖かった。



「そうか。無理はしなくていいんだからね? 叔父さんや叔母さんのことも、もう気にしなくていい。この際、うちの子になって構わないんだから」



祖父の言葉に涙が出そうになった。



でも、今更そんなことを言われても遅いのだ。



叔父と叔母はすでにこの世にいないのだから……。


☆☆☆


結局、あたしは透からの誘いを断り、祖父母と同じ時間を過ごした。



年に数回会いにいってはいるけれど、叔父や叔母がいる手前、甘えることもできなかった。



「友里は本当にいい子。だけど、少し我慢しすぎるところがあるから、お婆ちゃんは心配だよ」



「ありがとうお婆ちゃん。これからはもっと自分のために生きて行くから大丈夫だよ」



今までできなかったことでも、これからはできるんだ。



その自由を、あたしは手に入れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る