第35話

☆☆☆


制服姿で外へ出ても、学校へ行く気はなかった。



あの子を探し出さないといけない。



そう思い、歩き出す。



あの子が行ける場所なんて限られているはずだ。



ずっとあたしと一緒にいたんだから、見覚えのある場所にしか行かないはずだ。



そう思いながらも、本当にそうだろうかという疑問が頭をもたげてきていた。



ソレは人間の子じゃない。



普通の行方不明とは違う。



行った事のない場所にだって、簡単に行けてしまうかもしれない。



そう思うと、どこを探せばいいのかわからなくなる。



遠くでホームルーム開始を知らせるチャイムが聞こえて来るけれど、あたしの足は止まったままだった。



「友里?」



そんな声が聞こえてきて一瞬息を飲んだ。



振り返ると、不審そうな表情で透が立っているのが見えた。



「透……」



「なにしてんだよ」



そう聞かれて咄嗟に視線を逸らせた。



「別に、なにも」



「もう授業始まるぞ?」



「透だって、こんな時間にこんなところで何してんの」



そう聞き返すと「俺はただの寝坊」と、返された。



「あたしも寝坊」



「嘘つけ。お前は寝坊なんてしないだろ」



家庭環境を理解している透はすぐにそう言って来た。



「うるさいな! 別にいいじゃん!」



早くあの子を探さないといけないのに、こんな所で時間を使っている場合じゃないのだ。



思わず大声になってしまった。



透は驚いた表情をこちらへ向けている。



「……なぁ、まさか悪魔山に行くつもりじゃないよな?」



そう聞かれて、あたしは一瞬言葉に詰まってしまった。



あの子の行きそうな場所ではある。



「行かないよ」



あたしはつっけんどんにそう言った。



これ以上会話をしていると、ボロが出そうになる。



「じゃあ、あたしは行くから」



あたしはそう言い、学校とは逆方向へと駆けだしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る