第22話

一体なにがどうなっているのかわからなかった。



あたしの下着とマットには血痕が残っていたけれど、ソレの姿はどこにもないのだ。



とにかく家にいたくなくて、あたしは逃げるように学校へ向かった。



1人でいたくない。



「ちょっと友里、昨日はどうしたの?」



下駄箱までやってきたとき、梓にそう声をかけられて振り向いた。



その瞬間、梓の表情が険しくなる。



「どうしたの? 真っ青じゃん!」



「あぁ……うん……」



きっと貧血だ。



あの血はきっとあたしのもの。



あれだけ出血してたのだから、貧血になっても仕方ない。



「どうした2人とも」



透の声に振りむと、透もあたしの顔を見て驚いている。



「まだ体調が悪いのか? なんで学校に来たんだよ」



そう言いながら、あたしの鞄を持ってくれる。



「うん……1人でいたくなくて」



そう言うと、透と梓は目を見交わせた。



「そっか。そうだよね」



そう言って頷く梓。



ちょっと勘違いしているようだけど、訂正する元気はなかった。



「でも、授業受けれるのか?」



透にそう聞かれてあたしは左右に首を振った。



学校まで逃げてきたようなものだ。



授業まで受けられる状態じゃなかった。



「保健室で休ませてもらおうと思ってる」



あたしがそう言うと、透があたしの体を支えてくれた。



「わかった。あたしから先生に説明しとくから、今日はゆっくり休みなよ?」



梓にそう言われ、あたしは透と一緒に保健室へと向かったのだった。



☆☆☆


まだ時間が早かったため保健室は開いていなかったが、透が先生を呼んで開けてもらった。



なにもかもしてもらって、申し訳ない気分になる。



あたしは保健室のベッドに横になり、大きく息を吸い込んだ。



部屋のマットよりも心地よくて、すぐ眠りにつけそうだ。



廊下では透と先生がなにか話をしている。



もしかしたら、あたしが家で休めない理由を説明してくれているのかもしれない。



色々な人に心配をかけて申し訳ないな……。



そう思い、寝返りを打った。



ベッドの横には丸椅子が一脚置いてあり、透はそこにあたしの鞄を置いてくれていた。



その鞄をぼんやりと見つめていると、不意にゴソリと音がして動いたのだ。



ハッとして上半身を起こし、鞄を見つめる。



……気のせい?



そう思った時、再び鞄が動いた。



内側から押されたような動き方だ。



あたしは手を伸ばし、自分の鞄を膝に置いた。



持ち上げるとさっきまでと違ってズッシリとした重さを感じる。



「一体なに……?」



そう呟いて、鞄のチャックを開けた。



その瞬間、ソレがこちらを見上げているのがわかった。



白い眼に赤い瞳孔。



ジッとこちらを見つめているソレは、昨晩見た時よりも大きくなっている。



「やっぱり、いたんだ……」



目が合った瞬間息が詰まったが、すぐに冷静になった。



ソレを見つめていると、なんとなく愛しさが込み上げて来る。



「いつの間に鞄に入ってたの?」



そう聞くと、ソレは小首を傾げた。

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