第10話

翌日、気分は随分良くなっていた。



久しぶりに、家事の心配をすることなくゆっくり眠ることができたし、透のお母さんの料理がとても美味しかったからかもしれない。



あたしは透の両親に何度もお礼を言い、透と2人で家を出た。



こうして並んで学校へ向かうのも、なんだか恥ずかしい。



まるでカップルみたいだと思ってしまう。



「友里はずっと俺の家にいればいいのに」



透がそんなことを言うものだから、余計に意識してしまった。



ずっと透の家にいる。



そんな夢のようなことができたら、どれだけ幸せだろうか。



だけどあたしはこんなとき、どう返事をすればいいかわからなかった。



両親が死んで以降、人に甘えるということを忘れてしまった。



それから先は意識的に話題を変えて、学校に到着していた。



しかし、その頃にはなんだかまた気分が悪くなっていたのだ。



今朝のような調子の良さを感じられず、すぐに自分の席に座り込んだ。



やっぱりストレスだろうか?



胃の辺りがムカムカする感覚がある。



「顔色悪いけど、大丈夫?」



登校してきた梓がすぐに声をかけて来た。



そんなに青い顔をしているだろうか?



自分の顔を確認するために鞄に手を伸ばす。



その瞬間、急激な吐き気を覚えてトイレへと走り出していた。



胃からせり上がってくるものを押し込めることができない。



個室へ入り、鍵をかける暇もなく嘔吐した。



朝食べたものがすべて出てしまった気分だ。



「ちょっと友里!?」



すぐに追い掛けて来た梓が後ろから声をかけて来たので、あたしは水を流して振り向いた。



吐いたおかげで随分スッキリした。



「ごめん、ちょっと食べ過ぎたみたい」



吐いてすぐに調子が良くなるということは、きっと食べ過ぎが原因だ。



あたしは水道で口をゆすぎ、手を洗った。



「なんだ……ビックリした」



元気なあたしを見て梓は安堵したようにほほ笑んだ。



「昨日も今日も透のお母さんの料理を食べさせてもらったの」



「そうだったんだ?」



「美味しかったから朝からおかわりしたんだよね」



あたしはそう言い、ペロッと舌を出した。



人の作ってもらう料理はやっぱり一味違う。



愛情を感じる事ができた。



「食べ過ぎはほどほどにね」



あたしの話に笑いながら、梓は言ったのだった。

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