女子2人で鉄道旅をしています

湯郷五月

第1部

第1章 思わぬ再会 at わたらせ渓谷鉄道・神戸駅

思わぬ再会①

 鉄道。2本の鉄のレールの上を走る乗り物。乗っているだけで目的地へ運んでくれる。乗っているだけで遠くへと運んでくれる。


 人によってはただの移動手段。だけど、私にとっては夢の宝物庫。日常から非日常へ私を誘ってくれる夢の乗り物。


―――


 エンジン音に揺さぶられながら1両編成の列車は進んでいく。眼下には雄大な川の流れ。視線を上げると、どこまでも続くような錯覚を抱かせる山並み。山の間を縫うように進む水の流れに沿って線路は続いていく。


 私は今、群馬県に来ている。眼前を流れるのは渡良瀬川わたらせがわ。北関東有数の一級河川であり、群馬県・栃木県を通り利根川とねがわに注いでいる。


 この渡良瀬川沿いを走る鉄道路線がある。わたらせ渓谷鉄道。通称・わ鉄。今まさに私が乗っている路線である。


 群馬県桐生市の桐生きりゅう駅と栃木県日光市(旧足尾町)の間藤まとう駅を結ぶわたらせ渓谷鉄道は、元々足尾銅山からの鉱石を輸送するために作られた国鉄の路線・足尾線だった。しかし、足尾銅山の閉山に伴い赤字ローカル線となった足尾線は第3セクターに転換。足尾線を引き継ぐ形でわたらせ渓谷鉄道は発足したのである。


 地域の足だけでなく、足尾銅山への観光路線としての側面も持つわ鉄は、近年観光需要に力を入れており、トロッコ列車の運行も行われている。春は桜、夏は青々とした渓谷美、秋は紅葉、冬は雪とイルミネーション。四季折々の顔を覗かせるわ鉄は、訪れる人々の目を常に楽しませてくれる路線なのだ。


 さて、路線紹介はここまでにしよう。本日の目的は2つある。1つは鉄印帳てついんちょう。御朱印帳の鉄道バージョンだ。これは達成済み。既に押してもらった。


 もう1つの目的がこれから訪れる駅。知る人ぞ知るちょっと特別な駅。


『まもなく神戸ごうど、神戸です』


 トンネルを抜けると、ワンマン運転特有の車内アナウンスが流れる。さて、降りる準備をしよう。目的地はもうすぐそこだ。

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