第37話 月人の記録弐 追伸

 月人が家に戻ると美咲を送る途中に彼女に言われた事を思い出す。「でも冬毛で暖めるなんてよくおもいついたね」思いついた。違う、月人は知っていただけだ。そうなぜなら。


「ふぅ、今夜は疲れたぜ……」

「お疲れ様、お父さんもさっき帰ってきたばかりよ」


 ガチャリとドアが開く音のするほうを見ると寝巻きに着替え終わった和人が台所に入ってくるところだった。


「なんだ月人、随分遅かったな」

「友達送ってたんだよ、寒いとか言うから背中に冬毛生やしておぶってった」


 それを聞くと美月は小さく笑う。


「冬毛、あれあったかいのよねえ、ねえ和人君、今夜寒いから久しぶりに暖めて」


 「そうだな」と言って和人は人狼(ウェアウルフ)化すると上の寝巻きを脱いで美月を抱きしめる。すると美月は顔をほころばせ和人の胸に顔をうずめる。


「ふぅ、やっぱりもふもふしてて気持ちい……」


 子供二人の目の前でいちゃつく親の姿に月人と夜風は呆れ、沈んだ顔で台所を出た。


「月人、あなたあの二人のためにがんばれる?」


「……自信ない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る