エロ勇者は美少女魔王に寝返りました

鏡銀鉢

第1話 美少女魔王



「くらえ魔王! これが最後の一撃だ!!」

「なっ、なにぃ!? この私が……この私がぁあああああああ!!!」


 説明しよう!


 ここは魔法と科学の融合、魔科学が発達した世界で戦いの中心は剣と魔法。

 街から出ればモンスターがいるし亜人やら神やら悪魔も存在する。

 ぶっちゃけて言えば近未来系RPGの世界である。


 世界征服を目論む魔王エルバディオス・フェレスカーンを倒すべく、超絶イケメンスーパー勇者レイドとオマケのその他愉快な三人の仲間達は立ち上がった。

 RPG的少年漫画的大冒険と涙と笑いと命がけの戦いの日々はまるごと省略して、ついに勇者のトドメの一撃的な攻撃がクリーンヒットする。


「はぁああああああ!!」


 レイドの振り下ろした剣は最終形態である黒いドラゴンの姿になった魔王エルバディオスの首元を斬り裂いた。

 レイドの剣から迸(ほとばし)る金色の奔流が魔王の体を滅却し、地上最強と謳(うた)われた魔王はその黒き肉体を虚空にほつれさせていく。


「ぐっ……ま、まさかこの私が……この魔王エルバディオスが人間風情に……」


 もう翼と手足が完全に消滅し、魔王城の床に横たわるエルバディオスを、レイドは見据えた。


「人間風情、俺達人間をそう思っていたのがお前の敗因だ」

「なんだと?」


 ボロボロと肉体を崩しながら魔王はレイドの言葉に耳を傾ける。


「俺達人間は確かにお前達魔族よりもずっと弱い、だけど俺達人間はお互いの事を思い合い協力する事でその力を何十倍にもできる。そして魔王すらも倒せる力となるんだ」


 迷いの無い瞳で言い切るレイドの姿に、魔王エルバディオスは力無く目を閉じて、ついに最終形態であった肉体が滅び、人間とそう変わらない姿に戻った。


 変身する前の姿は重苦しいローブで隠れていたため、レイド達は今まさに初めて人間達の前にさらされた、その美しすぎる絶対美の前に息を呑んだ。


 魔族特有の新雪が如く真白い髪は見事な艶を持ち、多少幼さがあるが品のある顔立ち、真紅の大きな瞳はルビーのような輝きを放つ、抜けるような白い肌、通った鼻筋、細い手足、小ぶりな顔に、桜色の小さな唇……くびれたウエストとキュッと引き締まったお尻に……細身な体には不釣合いな大きく形の良いバスト……?


 最終形態に変身したさいにローブが破れたため、今の魔王は完全完璧な全裸であった。


(うぐぉおおおおおおおおお!!!!)


 レイドの脳内で本能軍が決起した。


「ふっ、私が倒されればこの戦争も終わりだな……」


 苦痛に美しい顔を歪め、潤んだ瞳と合わせて、魔王は常軌を逸した魅力を放っている。


(はうふぉおおおおおおおお!!!!)


 レイドの脳内で本能軍が理性軍を攻撃した。

 だが、そんな事は無視して、剣士が言った。


「そうだ、悪いが魔王、お前の負けだ」


 魔法使いが言った。


「俺達人間の勝利だ!」


 僧侶が言う。


「さあレイド、この悪逆非道なる魔王の首を討ち取るのです!」


(ぬあがあああああああああああああああああああああああああ!!!!)


 レイドの脳内で究極の無双騎士団たる本能軍に、腰抜け兵しかいない理性軍が勝てるはずも無く、理性軍は見事本能軍に敗れ去った。

 レイドは無言のままにツカツカと魔王に歩み寄る。


 剣士が「ついにこの時が来たんだな」

 魔法使いが「レイドは、バカで女好きだけど、いつも最後には俺達の期待に一二〇パーセント答えてくれた」

 僧侶が「ええ、ついに私達のリーダーが、いえ私達は英雄になるのです。レイドと共に」


 レイドが魔王の目の前で立ち止まる。

 三人は声を合わせて叫ぶ。


「「「さあレイド、俺達と俺達を支えてくれた全ての人達の思いを!!!」」」


 レイドはくるっとターンして、


「さあかかってこい悪党め!!」

「「「捨てたぁああああああああ!!!!???」」」


 全ての人達の思いを捨て去ったレイドに仲間達は頭を抱えて口々に叫んだ。


「ちょちょちょ、ちょっと待てよこれどういう状況!? え!? マジで何!?」

「レイドお前剣向ける相手違うぞ!!」

「戦いのダメージで思考力が低下したんですよね!? もうMPが無いんで薬草かポーションを使ってください!」


 だがレイドは力強い視線で言い返す。


「黙れ外道が! 俺はいついかなる時も常に全世界の美少女の味方なんだよ!!!」

「「「はいぃいいいい!!!???」」」


 驚きを通り越して、呆れも通り越し一周して驚愕する仲間達は納得するはずも無い。

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ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。

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