罪人の救世〜俺が知らない間に世界滅びかけていたので救います!〜

星 雨凛

第1話 動き始めた時

地下何百mも深くにこの男はいた。


 ここは、牢獄だ。しかも、特別独房である。たかが1人のために最高峰のセキュリティを誇っているこの牢獄は、マーヴェリック牢獄と呼ばれている。男が捉えられている場所は、牢獄というにはあまりに綺麗すぎである。牢獄といわれれば、過酷な環境下を想像しがちであるが、ここはそうではない。あまりにも異質な場所である。そんな場所に男は


彼は、特徴的な黒髪黒目をしており、顔立ちが整っていてて20代後半に見える。しかし、纏っている空気というか、その様子は重いのである。瞳は、暗く濁っていて、生気を感じない目をしており、得体の知れない恐怖を感じる。まるで過去に、戦争を経験し、その死地から生還した兵士のようであった。地獄を味わい、心が壊れてしまった人の成れの果ての姿だった。


そして、今この男以外に誰も居ないはずの牢獄にコツンッコツンッとゆっくりとした足取りで誰かがやってきていた。しかし誰かが来るなど、ありえないのである。まして、罪人である彼に、会いに来る人などいるはずがないのだから。


とうとう彼の元へと辿り着いてしまった。

おもむろに彼はその相手を見た。その相手は金髪の絶世の美女であった。彼と彼女の視線があわさり、初邂逅となった。


「今からこの部屋を出てもらいます。」


彼女は冷たい声だった。


「なぜ出なきゃらならないんだ?」


彼はめんどくさそうに突然来た彼女に言い返した。彼は、言葉を話すことは出来る。理性はのこっているのだ。彼は、死んでいる人間のように見えてはいるが、気力がないだけなのかもしれない。


「あなたには拒否権はないのです。」


彼女は懐にしまってあったナイフを彼の首元へあて告げた。


「さぁでてもらいますよ。」


有無を言わせない態度に彼は、口ごもってしまった。彼女の目は本気だった。あの目は人を殺したことのある目だ。いつでも、あなたの事を殺すことが出来ますよと暗に告げているのだ。つまり、この女はデキる人である。修羅場を掻い潜って来た人間なのだ。こんな美女なのにだ。彼の脳内ではもう降参しておけと言っていた。彼女に従えと。そして男の本能もそう告げていた。

なぜなら、いつの時代もいくら、罪人だとしても女の圧は恐ろしいのである。



「分かったから、その物騒なものをどかしてくれ」


やっとの思いで、言えたその言葉の効果を彼は期待していたが、やはり、彼女はナイフを下ろ……さなかった。


「あなたは罪人、それは無理な話なのですよ。」


彼女はふざけているのかと、睨んだ顔をしていた。


「はぁ〜……」


彼はため息をつき諦めた様子で、


「すまなかったよ、持ったままでいいから早く出してくれ」


彼は端的にそれだけを言った。

彼は突然牢獄から釈放されたが、その理由はまだ分かっていなかった。それを聞こうと思っていたが、出ている最中には話しかけることが出来なかった。彼女の不機嫌そうなオーラが漂っていたからだ。彼女は、それ以降話さなかった。

結局、彼女のいうとうりになってしまいこの牢獄からでることになったのだ。


いきなり、彼と彼女は牢獄で出会うという傍から見れば不思議な構図であるが、後に世界を救うことになる、人達の始まりの出会いであった。


こうして、彼らの物語の1ページ目がはじまった。

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