地上最強の冒険者が九人の弟子を取るそうです

霧雨 紫

第1話 とある女神からの通達

剣と魔法の世界ラクセル、それは繁栄の女神フューエルによって守護されている世界。


そして今、ラクセルはかつてないほどの大厄災に見舞われようとしていた。


それは、女神の対義である魔神が蘇り、十万を超える魔物を率いてラクセルを支配しようとしていたのだ。


試行錯誤の末、繁栄の女神フューエルは一人の人間にその命運を託した。


その人間の名はレイ・アモンド。地上最強としてその名を轟かしている謎に包まれた冒険者だ。


冒険者にはランクというものがあり、F→E→D→C→B→A→S→X というものに区別されているのだが、Xというのは紛れもないイレギュラーであり、過去にも現在にも一人しかいない。


さらにレイ・アモンドに対する情報は少なく、使用する武器は様々で、なぜか道化の仮面を被っていて下の顔を見た者は数少なく、どんな顔なのかは夜に知れ渡っていない。


それがXランク冒険者レイ・アモンドである。


______________________________________________


「レイ・アモンド、私の話を聞いてください。」


レイの意識が覚醒した。だが、記憶に無い光景が周りを満たしている。


ただ真っ白な世界がレイを包み込んでいて、そのレイの目の前には神々しい女性が佇んでいた。


「ここは……?あなたは?」


「私は、この世界ラクセルの守護者であり女神であるフューエルです。実は……レイ、貴方にお願いがあるのです。」


レイはこの状況やその女神と自称している女性が言ってることを夢だとは思わなかった。


なぜならば、自分の眼がそれらを事実だと裏付けているから……。


レイの生まれ持ったスキルである、強制ステータス開示にしっかりと映っているからだ。


名称 フューエル・イグノア

状態 通常(友好的)

種族 女神

称号 守護者 女神 観察者

スキル 創造 真実の瞳 空間操作 状態回復 贈与

魔法 無し

能力値 総合評価 SS+


高い能力値だな…さすがは女神様だ。


「確認しますが、これは夢では無く、貴女は本当に女神様なのですか」


頭では理解していても、到底受け入れ難い現状だった。


「はい、レイ貴方の精神だけを空間操作によって、こちらに移動させました。なので現実ではありますが、あなたの実体はここにはありません。」


手を握っても感覚はある、ここに自分の実体がないと言われても理解が出来なかった。


「まぁ、話すと長くなるのでそこに関しては割愛させて下さい。そしてここへ呼んだ理由は貴女の助けが必要だからなのです。」


「自分の助けというのはなんでしょうか?」


「私達、女神族の敵である魔神が復活します、そしてその魔神はこの、ラクセルを支配しようとしていて、十万の魔族を引き連れこの世界に災厄を|齎(もたら)します」


魔族が十万……さすがに親玉の力も分からないし、俺にも無理だ。


魔族というのは能力値が全体的に他種族よりも高いのだが、特に魔力値の高い種族であり魔界に生息していて、人族の敵対種族である。


そして、魔族一体で冒険者ギルドからはA級に値すると言われている。


しかし最近では、レイが抑止力になったせいか、魔族の人間界侵攻はピタリと止んでいた。


「流石に自分も十万の魔族の大軍とそれを統べる親玉と戦ったら、負けは目に見えています、それに女神様でも対処出来ないのですか?」


「私達女神は、人間界に干渉できることは決まっています、私はスキルを創造して貴方たち人間に渡すことしかできません。今回、貴方をここに呼んだことも特例です。」


女神様が苦い顔をしたのを俺は見逃さなかった。


「しかし、魔神は違います、私たちが人間界に干渉出来ないのに対して、奴らは関係なしに干渉してきます。」


「そしてもちろん貴方一人では戦えません、ですから貴方が弟子を作るのです」


俺が弟子を取るか、あまりしたくない事なんだが、今回ばかりはしょうがないことなのか。


なぜ取りたくないかは簡単だ、ただ面倒臭いとい理由だった。


しかし、今回ばかりは状況が違った、四の五の言っていられない事態だ。


「事情は分かりました、ですが十年の間に何人集めればいいんでしょうか。」


相手は十万もの数だが、教えられる人数も限りはあるし、そもそも努力ができ、才能も必要だ。


「九人です…」


俺は耳を疑った。


「え?今なんと言いましたか……?」


「九人集めてください!」


正気なのか……たった九人で相手できるのか?!


「九百人とかじゃなく、九人ですか?!」


「九人で大丈夫です、女神情報です!」


いきなり胡散臭くなったな、おい。


「その九人は貴方に引けを取らない努力と才能の持ち主です。そしてその九人の情報は私が念入りに調べました。後であなたのステータス情報にメモとして入れます。」


確かに多すぎても中途半端になっちまう、俺も腹を括るか。


そして、ここまで念押しをするということは十分な勝算があるということなのだろう。


「分かりました、本当に勝算はあるんですね」


「はい、約束します。貴方が十人もいたら楽勝でしょう!」


楽勝ではないだろうが、不可能ではないはずだ、まぁ頑張るとするか。


女神様はニコリと笑うと手を大きく広げた。


「では、レイ・アモンド、そして未来の弟子達、この世界を救ってください」


「女神様って思ってた感じじゃなかったな……」


そこでレイ・アモンドの意識は深く沈んだ。

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