ご令嬢の推しは、独身パティシエ

冨平新

第1話 羨望の的

 キーンコーンカーンコーン・・・


 2限の一般教養の『日本史』終了のチャイムが鳴った。



 大学2年生の橘桃花は、推薦で國學院大学に合格した。

 桃花は資産家の娘、つまり令嬢で、羨望の的であった。

 桃花の毎月の小遣いは50万円、

欲しいものはほとんど手に入れることができた。


 髪は黒髪サラサラストレート、目は切れ長一重。

 体型はややぽちゃであったが、

太っていると形容すべき体型ではない。


 大学には、友達と呼べる女子はいなかった。

 というのも、資産家令嬢であることで嫉妬され、

1年生の時に女子のグループから裏切られ、

グループの女子全員から誹謗中傷のSNSを

送り付けられたりする虐めを受けたのだ。

 大学には単位を取るためだけに通っていた。


 桃花の美しく長い黒髪は、とても目立ち、

男子学生の憧れの的であった。

 おまけに資産家令嬢であることから、

『ミス國學院』に参加を促されたが、

桃花は華やかなステージに立つことなどが

苦手だったので断った。

 遠巻きに桃花を見つめる男子生徒の数は多い。


 SNSの誹謗中傷により、

桃花は虐めの対象として大学内で拡散された。

 桃花に嫉妬する醜い女子たちは、

同調して同じように桃花を虐めた。

 桃花は女子の集団とのすれ違いざまに

「ブス!」「デブ!」などと小声でののしられ、

数歩歩いた後で笑われる、

などという毎日を送っていた。

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