第4話 時間の使い方

-side リアム-




 アレクに連れられて俺は、冒険者ギルド内にある食堂に来ていた。



「おや、アレクさんまた子供のお守りですかい?」



 また食堂の人に声をかけらている。



「おう。そんなところだ」

「じゃあ、その子の分はサービスって事で」

「ああ。助かる」

「気にしなくていいですぜ。ギルドマスターから、許可ももらってますし」



 どうやら、アレクの世話焼きはギルドマスター公認なようだ。

 一緒に食べる飯は食堂らしく、オークカツカレーにした。

 他にも、タコスやドリアなど美味しそうな食べ物は沢山あるが、はじめての外食だから食べ慣れてるものがいいと思ったからだ。



 初めて、オークの肉を食べるワクワクと共に、トンカツを一口食べる。



「うまっ」



 カリカリ……。ジュワー。



 その瞬間、頭の中にレシピが思い浮かんだ。そういえば、あの神様たちがくれたスキルに[食の大賢者]というものがあった。さっきの解体場での出来事もそうだったのだろう。



 それにしても、この3日間、薄々気付いていたが、どうやら、見た目はほとんど変わらなくても、こちらの材料を使っているため若干衣の感じが違うらしい。

 カリカリしていてとても美味しい。

 レシピにオークの肉を使っていることから、さっきの魔物を食べているんだろう。



 うまいのは否定しないけど、ゲテモノ料理食べている感じがしてきた。

 あまり、深く考えないようにしよう。



「そうだろう。衣がカリカリしていて、中はジューシーだ。王道だな」

「ええ。カレーも食べましたけど、まろやかでピリ辛な味がしてとても美味しいです」

「がっはっは。気に入ってもらってよかった。ここの飯は安くて美味いと人気なんだ。

 貧乏な時はここにくるのが1番だ。

 俺も若い頃はお世話になった」



 アレクは、嬉しそうに笑っている。それから、急に真剣な顔になって、「改めて自己紹介をする。もう知っていると思うが、俺はアレク、ランクはBだ。……ところで、お前、名前はなんていうんだ?どこからきた。」と本題に入ってきた。



『ふーむ。Bランクは人間界ではそこそこ強いな』


 

 アレクがそう言うと、ルーカスがそう伝えてくる。



「(ふーん。…待てよ。じゃあ、Aランクは?)」

『そこそこだな』

「(Sランクは?)」

『そこそこだな』

「(全部そこそこじゃねえか)」

『いや、Cランク以下は全部雑魚だ』



 これはひどい。

 


「あ、申し遅れました。リアム=スミスです。アルケーの自宅から来ました」

「ほー。って、お前がリアムか。俺の妹のリサがお世話になっているな」

「え……?ああ。リサのお兄さんだったんですね」



 リサというのは、うちのメイドの一人で、

掃除係を担当してくれている。



「ああ。しかし、随分と大人っぽいんだな。まだ5歳で幼くて、とても可愛いと聞いていたんだが」

「あはは」



 大人っぽいという意見を聞いて、適当に笑って誤魔化す。

 転生して生まれた変わった俺は赤髪にエメラルドグリーンの目をしていて、ちょっとヤンチャなガキっぽい見た目だが、愛らしさがあるなと思う。

 自分の見た目なのだが、流石に転生して3日間では馴染んでないから、この発言も許してほしい。

 不思議と他人の感覚はないのだが、自分の体とも思えない。そんな感覚である。

 走ったり、歩いたりはできるから、精神的なものなのだろうとは思うけど。

 そんなことを考えて、その後無言だった俺に気を遣ってアレクは話を続けてくれる。


 

「俺はてっきり、お前が金に困ってここに来たと思ったから、話だけ聞いて適当に仕事を紹介して返そうと思っていた。だが、どうやら純粋に見学したいだけだったようだな」

「たしかに。そう見えますよね」

「ああ。そういうガキも沢山いるからな。そうして10歳に満たずに特例で冒険者になったやつは大体死ぬ。ルールで最低年齢が10歳というのもよくできていると思うぜ。流石に、いくら身体強化の魔法を使えようが、5歳では身体能力や魔力量的に限界があるしな。

 俺はギルマスに言われて、そうしたガキの面倒を見る仕事もやっている。その分、前線で敵と戦う時間は減るがな。引き止められず、死んでいくガキを見るのは、ギルドとしてもごめんなんだ」



 なるほど。仕事だったわけだ。



「あ、そうだ」

「ん?なんだ?」

「その、まだ5歳ですけど、俺にでもできる仕事があれば紹介してほしくて。その、時間はあるので、何かすることはないかなと」

「ああ?はは。まあ、俺はお前の家庭の事情とか色々知っているが、その発言を普通のやつにしたらぶち殺されるから気をつけな」

「ああ……、確かに」



 この世界の普通の人は食うのに精一杯で、時間がある人は少数である。



「そうだなあ。いいとこの坊ちゃんであるお前にスラムの奴がやるような仕事を任せられないし。うーむ」



 アレクは本気で悩んでいる。

 実質平民である俺に気を使う必要は全くないと思うが、権力者である俺の父親に忖度しているのだろう。

 父親には、まだ会ったことないが、幼い俺を一人暮らしさせ、寂しい思いをさせていただろう状況を見るに、いい父親であることは期待できそうにない。だから、早めに実家の援助も断ち切った方がいいと思っているから仕事を望んでいるというのもある。



「だったら、商業ギルドに行くのがいいのかもれねえな。少なくとも、冒険者ギルドで紹介される仕事よりはマシなはずだ」

「わかりました。明日行きます」

「一応、お前の家、スミス伯爵家の者であることは、伝えとけよ。あと、リサと一緒に行け。後で俺からも商業ギルドに伝えておくが。紹介があって、大人びていても、5歳児相手では相手にしてくれないと思うからな」

「はい。ありがとうございます」



 というわけで、次は仕事を探しに商業ギルドに行くことになった。



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