幕末明治大正ドラマ・マンガ感想と解説っぽいもの

井上みなと

第1話 『津田梅子~お札になった留学生~』感想・森有礼はなぜ暗殺されたのか

 『津田梅子~お札になった留学生~』良かったですね!

 

 自分は主に田中圭さん演じる伊藤博文と、ディーン・フジオカさん演じる森有礼さんばかり見てましたが、田中さん演じる伊藤は優しく可愛らしく、ディーンさん演じる森有礼さんは上品で素敵でした。


 残念だったのは、後半駆け足だったところ。


「え、もうあと10分!?」「津田塾を作るところこそ見たかった」というお声があり、自分も津田梅子さんほど長い人生なら、連ドラで見たかったなと思います。


「女性が主人公なら朝ドラ」となりがちですが、そうではなく、全10回の民放ドラマとかで見たいですね。


 今年はお正月にはフジテレビが『潜水艦カッペリーニ号の冒険』を、今回はテレビ朝日が昨年の『エアガール』に続き、『津田梅子~お札になった留学生~』をやってくださったので、民放の歴史ドラマにも期待大です。


 さて、後半駆け足と言えば、ディーン・フジオカさん演じる森有礼さんが突然、殺されてしまい「なんで殺されちゃったの!?」驚いた方も多かったようなので、解説です。


 森有礼さんが明治憲法発布日の朝に、刺客に刺されたのは史実です。


 ドラマの流れだとちょっとわかりづらいですが、明治憲法発布時の総理大臣は伊藤博文ではありません。

 伊藤は明治憲法の仕上げに集中するため、薩摩の黒田清隆さんに総理大臣を任せ、この時は枢密院議長すうみついんぎちょうという立場になっています。


 ただ、森有礼さんは黒田清隆内閣でも文部大臣ですので、本来なら、この明治憲法発布の式典に出席予定でした。

 

 朝8頃、犯人の西野文太郎が官邸を訪ねます。


 大臣に会いたいという西野に家の人が応対していたところ、式典のために正装した森有礼さんが奥から歩いてきて、西野が出刃包丁で森さんの腹部を刺し、森さんは傷口から腸が三寸ほど出る重傷を負いました。


「森さんは刺されながらも西野と戦った」とか「大臣襲撃計画を耳にしたから大臣にお伝えしたいと西野が嘘を言って、森さんがわざわざ知らせに来てくれたならちょっとくらい面会してもいいだろうと会ってしまった」とかいろんな説がありますが、明治憲法式典の朝に襲撃されて、刺されて重傷を負い、翌日に亡くなったのは確実です。


 西野が森さんを刺した動機は「森大臣が伊勢神宮内宮を参拝した際、その社殿にズカスカと入って、御簾をステッキでどけて中を覗くなど不敬な行為をした」といった新聞報道を信じ、怒ったためです。

 

 今、見るとそこまでかと思うのですが、それまでにも森さんが反感を買っていたという面もあるかと思います。


 森さんは非常に西洋化志向の強い人で、それまでも「日本の公用語を英語にしよう」と言い出したりしていました。

 西洋化の反動で、日本らしさを大事にしようと考える人もおり、西欧化志向の強い人への反発があったのです。


 西野が明治憲法発布の日を森さん襲撃日に選んだのは「こんな不敬な人間を天皇陛下のいる式典に出席させてはならない」という思いがあったそうです。


 なにせ幕末からまだ20年です。西洋化したように見えて、尊王攘夷の勤皇精神がまだまだあり、それが今度は皇室崇拝になる時期です。


 西野の犯行は「明治憲法が発布される吉日になんてことを!」と憤る人もいれば、西野に同情して西野の実家に香典を送る者などもおり、当時の複雑さを感じます。


 森さんを刺した後、西野は同僚と共に駆けつけた森さんの秘書官・座田秀重さんに仕込み杖で斬られて、絶命します。


「森有礼はなぜ暗殺されたのか」の結論は「伊勢神宮で不敬を働いたという報道を信じた人が、森さんを許せないと思い、斬りつけた」なのですが、この後、近代化を感じることが起きます。


 西野を斬った座田秀重さんが裁判に掛けられるのです。


 これが古い時代ならば「悪い襲撃犯をよくぞ倒した!」で終わりそうですが、明治は法律のある時代です。


 裁判が行われ、どんな状況であったかがきちんと検討され「森大臣が刺され、犯人の西野は出刃包丁を抜いて振り上げ、森大臣かその場にいた同僚を刺す可能性があったので、【他人のために正常に防衛をなしたものとする】」という判決が出されます。


 刑法、裁判所が機能してる近代を感じるお話です。


 感想は2話以降にも続くので、スマホでご覧の方は広告下の「次のエピソード」の↓を押して下さるとうれしいです!


 

 

 

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