第43話 白くて、高い

 車が建物の中に入る。ぐんぐんとしたへ潜っていき、壁には『B5F』と書かれていた。

 小綺麗で立派な地下駐車場、オレンジ色の蛍光灯が照らし、多種多様な車に光が反射する。止める場所を探すのが難しいほどに埋まっており、今日の会議はかなりの数で行うのだろうと想像がついた。

 地下特有のひんやりとした空気、まだ春を迎えてないからか多少寒く感じる。特に緊張をしていないが、僕と職員さんの間には何の会話もなく、響き渡る靴の音がこの場所の静けさを強調する。少し歩いていると、入口の方からエンジンの音が聞こえてきた。別の誰かも着いたらしい。

 職員さんと一緒にエレベーターに乗る。65階まであるこの建物は何回かエレベーターを乗り換えなければ最上階につけない。場所がどこかは聞いていないが、職員さんが知っているだろう。慣れた手つきで15Fと表示されたボタンを押した。


 床がグォンと、不気味な音を立てながら動く。B4F、B3F、B2F……と登っていき、12Fと表示されたところで止まった。扉が開くと、二人の男性が軽く会釈をしながら乗ってきた。

 そのまま扉が閉まる。

 閉まりきったと同時にまた床が動き出す。この箱の中はとても静かだ。

 誰も途中で乗ってくる人はおらず、そのまま15階についた。

 降りると、すぐに近くのエレベーターに乗り移った。30Fと表示されたボタンを押し、扉が閉まる。ぐんぐんと登っていく。

 人が乗り降りを繰り返し、30階に着く頃には7人と人が増えた。また別のエレベーターに乗り移り、42Fと表示されたボタンを押した。床が動いた。

 

 目的の階に到着し、降りる。前と右に道が伸びている。そのまま案内されるがままに進み、一つの部屋の前で止まった。『大会議室18』と書かれた部屋だ。

「こちらの部屋で待っておいてください」というと、職員さんは戻っていった。

 扉を開けると、中は大会議室という名が恥ずかしくないほどに大きく、円形の机とそれに沿う形で椅子がついている。


 すでに何人かおり、知っている顔ぶれだ。

 全員が全員探索者。間を開けて座り、各々好きなようにしている。僕に気づいたようで、手を振ってくる者もいた。僕は手を振りかえし、人から一番離れた席に座る。

 スマホを取り出して、今後の予定を確認することにした。


 僕がカレンダーとにらめっこしている間に続々と人が集まってきた。周りの探索者たちもお互いに仲の良い者同士で集まり、談笑して盛り上がっている。こういう機会でなければあまり出会うことのないであろう知人をよく見かける。北から南まで、日本中の探索者が集まっているようだ。それだけ今日の会議は重要らしい。

 職員の人も出入りを繰り返して、資料をたくさん積み上げている。そろそろ始まるのだろうと、周りも察したのか話し声がだんだんと小さくなる。

 紙が擦れる音がよく聞こえる。扉が開く音がした。一人の男が入ってくる。

 いかにも仕事ができそうな雰囲気を醸し出し、メガネが光を反射する。慣れた手つきで資料を確認すると、近くにいた職員に配らせた。机の上にあったマイクを取り、あたりを見渡す。

 時計がちょうど12時を知らせた。

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