日常

番外1 日常

 窓から差し込む光、まだ肌寒い空気。それらのことから早くに起きたのだなと思う。背中に当たる柔らかい感触を押し退け、ベッドから出る。

 冷蔵庫の中からベーコンと卵を取り出し、調理。

 匂いに誘われて起きてきた後輩ちゃんにパンをトースターで焼いてもらい、皿にベーコンエッグと、トースト、残っているキャベツを添えて朝ご飯の完成。

 テレビをつけながら雑談。最近話題になっている野球選手、仕事のこと。寝る直前に来た支部長からの連絡でこの前の少女が隔離されて一応安全に暮らしていることを伝えたら、「今度会いに行きましょう」と嬉しそうな顔をしていた。

 癒されるペットのニュースが切り替わると、昨日探索したダンジョンのことが出ていた。






 扉のノックする音から目が覚める。いつの間にか眠っていたようだ。開いた扉には山女やまめがいた。どうやら本部の方から手紙が届いたらしい。私の机の上に置いといてもらう。

 デスクトップには、昨日の探索記録、キララの行動の記録、突然現れた不審者のことなど。一度本部の方まで峨々とキララを送り出し、ここに帰ってきたのは夜の11時。途中に向こうの奴らに絡まれたのも大きな原因だが……。そういや昨日は風呂に入っていない。

 風呂に浸かって、さっぱりしてくるか。






 ベッドとスマホの充電器しかない内装、コンクリートが剥き出しの壁、そんな部屋の中で朝を知らせるアラームが鳴っている。ちょうどアラームが鳴り終わった頃だろうか、ベッドの中から一人の男が起き上がる。

 バサバサの長髪、クマが目立つ顔に、下着姿。酒臭い自分の息。昨日何があったかを思い出したいが、頭が猛烈に痛い。完全な二日酔い。これだけで昨日何があったのかが容易に想像できる。どうせ、ここ本部に戻った時にめんどくさい同僚に酒の席に連れて行かれたのだろう。

 ズキズキと痛む頭を抑えながら、ベッドの下から服を取り出す。水道の水を飲んで、酒で焼け爛れた喉に潤いを。

 後で医務室で二日酔いを治してもらおう、そしてあの同僚を締めよう、そう決意する峨々であった。






 辺り一面を覆う動物の人形。目が痛くなるようなピンクの壁紙。箪笥、机、ベッド、どれを見ても少女が好むような家具。

 その部屋の真ん中に一人の少女。魔法少女のような姿をした小柄な体型。いつも手元にあるキャンディは持っておらず、白いテーブルの上のものをじっと、じっと、見ている。

 ただ無心に、その表情はどこか遠いところを見ているようで、ここにはいない者に思いをささげてる。

 可愛らしい時計が7時を伝える。

 途端にその少女の目がこの世界に焦点を合わせ、動き出す。

「おっちゃらまき〜〜〜」と、自分以外誰もいない部屋に挨拶をして、キララの朝が始まる。部屋を出る前に先ほどまで見つめていたもの、今はもういない家族との写真に微笑んで、部屋から出た。


「おはよう、キララちゃん」、隣人からの挨拶にいつもの私の挨拶で返す。

 今日も魔法少女は活動を始める。

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