第32話 消失

 後ろの方で後輩ちゃんっと野郎が騒いでいる。場所が場所じゃなければ、中のいい喧嘩に思えるような雰囲気が漂ってくる。まぁここはダンジョンであり、そんなふうにウカウカしていると軽く死にそうな場所だけどな。

 下に降りる階段は中央の柱の近くにあったはず、一二三さんが暮れた設計図を見ながら周囲を周囲を確認していると黒いのが飛んできた。

 そう、ゴキブリである。

「復活してたのか」

「ギャァァァァ!!!Gだぁぁぁぁぁ!!!!!」

 僕の周囲の闇を薄っぺらくして応戦。羽を器用に使いこちらに向かってくるがそこまで数が飛んできてないから楽だ。まとめて闇に葬り去る。

「うげぇ、気持ち悪いものを見た」

 どうやらまだ飛んでくるらしい。階段の方向だろうか、そこからウジャウジャとこちらにやってくる。

「下の階層に卵を産み落としてそうだな」

「わたしがとつげき?」

「そうだな、蹴散らしてこい。峨々はそいつを見張っておいてくれ」

「了解」

 僕の操る闇がゴキブリを蹴散らす前に、闇が霧散して元に戻った。闇が操れなくなっている。後ろの方を振り向くと、してやったりという表情をする野郎が。

「おい、何をした」

「面白そうだから」

「違う、理由を聞いたんじゃない。闇が操れなくなっているのをどうにかしろ」

「前から迫ってきてるよ」

 こいつ……まずは目の前にやってきてるゴキブリをどうにかせねば。

「キララ!!!戻ってこい!!!!!」

 やばい、かなりやばい。こいつを連れてきたのがここで仇となるとは、流石に予想できない。キララがトップスピードでここまで帰ってきて、周囲のゴキブリどもを粉砕する。

 キララのキャンディに何本か黒い足がついているのを見れば、どれだけ強い力で潰したかがわかるだろう。

「早くしろ!キララ一人でなんとかできる数じゃない」

「その時はその時さ!!」

 歯を見せながら笑いやがって…………。

 どんどんと数を増やしながら襲ってくるゴキブリ、増援が来るのが早い。峨々が微力ながらも能力で助けようとしているが、特に効いてない。

「テメェ」

 こいつの胸ぐらを掴んだ時、こいつの姿が薄くなってきた。どこか輪郭がぼやけ始めて、霧のように掴めなくなってくる。

「あちゃーー、時間切れかな?うん、このじゃあそうなるのかな?君たち探索者だし」

「おい、どうなってるんだ」

「ゲーム風にいうと、強制イベントしゅーりょーって感じかな?やったね!」

「おい、訳のわからないことを言ってないで……」

 体が薄くなり、そのまま消えた。どうなってんだよ。目の前でよくわからない状況が起きたが、闇が操れる。

 能力が元に戻ってる。

 キララの体が数体のゴキブリに齧られておりギリギリだったらしい。ここら一帯の闇を僕達に当たらないように床まで、押しつぶす。

 飛んできてるゴキブリも、襲い掛かろうとしてるゴキブリも、卵を産んでるゴキブリも、まとめて、ゴミと化した。

「危なかった……」

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