第1章 目逸らしたくなる現実から……

第12話 ということで

 予定通りに家に帰宅。まぁトラブルしか無かったのでトラブルがなければもう少し笹目さん達とダンジョンに潜れただろう。

 チャイムを押すと扉の奥から人がやってくる気配。ドタドタと音を立てて扉を開けた後輩ちゃんと再会。

 こちらを見てポカーンとしている後輩ちゃん。それも仕方がない、僕が抱えている者に呆気に取られている。唐突なことなのでしっかり説明をしよう。

「ということで、子供を預かることになった」

「ちょ待てーー!!」



第1章 目を逸らしたくなるような現実から……



「いや、待ってください先輩。先輩が予定通りに帰ってきたことに喜びを隠せていないこの私が勢いよく扉を開けると幼い子供、しかも女児!を抱えて帰ってきた先輩に驚きを隠せないですよ!!そして、ということでってなんですか、攫ってきたんですか!!!」

「なんだ後輩ちゃん。そんな些細なことを気にするのか?僕が腕を1本失って帰ってきたこともあっただろ」

「いや、あの時とはベクトルが違います!!まじで誰ですかこの子。私まだ先輩と子供を作っていませんよ!!!」

「さらっと子作りしたい宣言した事に僕は驚きを隠せないな」

「えー、真面目に誰ですか?先輩の親族にこんな子いましたっけ」

 玄関で騒いでもどうにもならないから家に入る。僕の腕の中でぐっすり眠っているので、ダブルベッドの方で寝かす。

「説明して下さいよ、隠し子ですか?」

「誰とのだよ」

「まだ名前が出てないヒロインとの」

「メタいわ!!」

「じゃあ何なんですか、教えてください!」

「なら教えてやろう。あれは吹雪の中のことだった」

「ふざけないでください。寒いですよ」

「吹雪だけにか」

「「アッハッハッハッハッ」」

 後輩ちゃんがトントンと胸を叩く。ふざけすぎた。

「ビリッとやられたいですか?」

「話します、話させてください」

 オホンっと、喉の調子を整えて僕はこれまでの経緯を話し始めた。

「あっ、過去回想入るんすね」



 二手に分かれる道を左に進むと、子供がいた。子供?いやおかしくないか?どうしてこんなところに。

強奪者の罠の可能性もあるので周囲を警戒して近づく。やっぱりおかしい。

 なんで髪色が白色なんだ?

 いや、確かにこの世界はファンタジー要素をかなり含んでいるが、髪が白いヤツなんてそんないないぞ。しかも僕が知っている白髪は、全員何かしらの能力の影響から白くなった。

 この子供が能力を持っている?

 それは…………有り得るか。現にダンジョン内にいるのだから、影響を受けていると考えても良い。とりあえずこの子供を連れて帰るか。目を覚ましたら色々と聞きたいことがある。今日のダンジョンの探索はどうしようか。

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