第6話 探索済みダンジョン

 ダンジョンに入ってから1時間ほど経った。

 僕以外は、ここまで歩いてくるのにヘトヘトである。だいたい5kmほど歩くのは初心者にとっては辛い。体力の無い者も【探索者】になろうとする。

 まぁ、【探索者】を目指そうとしてる者は所詮こんなものだ。だいたいのお客さんは、幻想が打ち砕かれ、現実に敗北して、3日目が終わるぐらいにはダンジョンに潜りたくない、【探索者】にはなりたくないと、言う。

 その中でひと握りの優秀な初心者達と、僕は1ヶ月、3ヶ月と探索をするのだ。

 

 今は体力の回復と、ダンジョン内での、安全な過ごし方、拠点の立て方を説明中である。

 熟練者になればなるほどそういった知識が着いてくものだが、僕の仕事はそういった知識を教えたり、学ばせることでもある。「レベリング」とはこういうことだ。

 実際には何も知らず手探りに始めた方が体に身につき、きちんとした経験となるのだが、一般人から脱却することが出来ない初心者探索者にそれを求めては、死んでしまう。

消えてしまう。

ダンジョンに呑み込まれてしまうのだ。

 そうならないための僕の仕事。

 大体ダンジョンの基本を教えたのだが、きちんと覚えられたかどうかは、怪しい様子。こういう輩は直ぐに【探索者】を辞めていくだろう。そして、僕の仕事は早く終わるだろう。やったぜ。


 休憩も終わり、そのままダンジョンの奥に進んでいく。途中何度かモンスターに遭遇したが、僕の能力で、壁に縫いつけて、襲ってきたモンスターの解説なども挟みながら進むところ2時間。

 モンスターの血で顔が真っ白となっている女性二人と、体力がなくてヘトヘトの男性二人。以外だったのは、ヒョロが、息を切らしながらも余裕そうな表情で着いてきたことだ。

 日頃から運動でもしてるのだろうか。筋肉が付いているとは思えない体つきなのだが、どこからそのスタミナは出てくるんだ。不思議。

 そういえばパーティーメンバー全員に能力は出たのだろうか。ダンジョンに入ってから1~5時間で能力が身につくのだが、ダンジョンから出たら聞いてみるか。能力によっては、今後の探索において重要になるので早めに確認しておきたい。


 そんなことはさておき、そのまま【ボス】、ダンジョンにおいて最も強いとされるモンスターが出てくる場所の手前まで進んだ。道中の敵は僕が処理していたので、皆さんは歩いて、モンスターの特徴、ダンジョンについての説明を聞くだけだったのにヒョロ以外疲労困憊のパーティー。体力のトレーニングもいずれしなければならない。

 僕がチャチャッと倒して、【ボス】の解説して帰った方が良さそうだ。

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