文化の道

数秒にもわたるブザーがなり

つらなった丸い照明が光を落とす

その上にはレトロな『禁煙』

私の横には青いブラウスの女性

私の足元には貸してもらった本

      飲みかけの烏龍茶

      黒いレザーバッグ

      これまでこの席に

      座ってきた人々の

      息遣い記憶知識や——

座席はまだらに空いているまま

奥行きの先にあるスクリーンに命が宿る


飛行機にはソングラインがない

歩くことにより、道が産まれる

踊りによって音楽によって物語によって——

歌から大地はうまれ

   大地から歌がうまれる

その循環

その流れ

過去現在未来を繋げる

人々の中に宿る光


数秒にもわたるブザーがなり

つらなった丸い照明が光を落とす

その上にはレトロな『禁煙』

エンディングロールが映し出され

               停止閉館する

それでも歌は鳴り止まない

よどみなく途切れることのない音は

この風景を書き連ねるかぎり

私の中を流れゆき

私の言葉を聞き知り読む人がいるかぎり

この歌は鳴り止まない

よどみなくよどみなく清らかに

途切れることのない道となる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る