第34話

三毛猫とは珍しいな。



最初はそんな気持ちで野良猫を見ていた。



野良猫は足を上げてペロペロと自分の腹をなめ始める。



その様子を見ていると次第にその姿が叔父と重なってきた。



大きな腹にふてぶてしい態度。



少し木に触ることがあればすぐに手を上げて、言いなりにする。



ふつふつと怒りがこみ上げてくる。



握り締めた拳は爪が食い込んでいるが、少しも痛みは感じなかった。



気がつけば光平は野良猫に近づいていた。



怖がらせないように身を低くして、笑顔で「よしよし」と話しかける。



野良猫は近づいてくる光平に一瞬逃げ出そうとしたが、光平がその体を握り閉めたほうが先立った。



野良猫は光平の腕の中で暴れる。



光平はニヤリと笑い、その細い首に手をかけた。



片手で簡単に持てる程度の華奢な首。



野良猫はギャーギャー!と、まるで人間の子供のような鳴き声を張り上げた。



だから光平は首を掴んだ手に力をこめた。



それで野良猫は静かになった。



とても簡単なことで、光平の心はスッと晴れていったのだった。

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