エリートサラリーマンは異世界転生しても周囲の期待を上回り続けます!

紺灰

再始動編

第1話 佐藤の終わり

「マネージャー、例の件、クライアントには了解を頂きました。」



『サトー!君は相変わらずクレイジーなやつだ!そんな事君以外にはできないよ!』



ここはアメリカ、シアトルにある世界的有名企業の本社ビル。


まだ年若い日本の青年、佐藤謙が、上司から大絶賛を受けていた。


『そろそろサトーをプロジェクトリーダーに、という声もあがっている。これからも頼むぞ!』



「オフコース。今後も結果を出し続ける事が出来るよう、精進致します。」


そう言って、自分のワーキングスペースへ戻る。


そこにはゆったりと寄り掛かれる大きなクッションソファと、整理の行き届いたファイルケースのみが置かれていた。


クッションソファに腰掛けた佐藤は、持ち歩いていたバッグからタブレットを取り出していくつかのファイルを作成したところで立ち上がる。


「さて、定時ですので私は失礼致します。」


『今日も早いな、サトー!お疲れ様!』


「残業をすると会社に余計なコストが発生してしまいますので。お先に。」


そう言い残しオフィスを出た佐藤は、歩き始めたかと思うとすぐに建物に入って行った。


時間の無駄を嫌う佐藤は、職場から徒歩3分のアパートメントで暮らしているのだ。


「スーザン、サンクス。」


「ノープロブレム。Bye、サトー」


佐藤は帰宅後すぐに家政婦のスーザンを帰宅させ、出来上がっていた食事に手をつける。


合理性を好む佐藤は厳格なタイムテーブルを作成し、家政婦にもそれを厳守させていた。


とはいえスーザンは佐藤の元で働き始めてもう3年が経つ。


食事が出来上がるタイミングも完璧だ。


「フム、今日は変わった味付けですね。」


調味料の分量や火加減、火をかける時間まで計算したレシピを渡しているはずなのだが、何か手順を誤ったのだろうか。


とはいえ人のやる事だ。


完璧に管理し切る事は非常に難易度が高い。


少し苦いような気がしたが、そのまま食べ進める。


しかしある程度食べ進めたところで佐藤の手が止まる。


「これは…なぜ…」


そう言いながら佐藤はダイニングテーブルに突っ伏し、部屋に静寂が訪れた。

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