第5話


「私、カロリーナ・クリスチーヌ・ニコラヴィッチは、ハント王国第二王子であらせられるヨーゼフ・フォン・ハントとの婚約を解消する運びに相成り居ました。

それに伴い、ヨーゼフ殿下の側近の皆様と我が帝国出身の令嬢達の婚約も白紙となります。

私との婚約が無効となった場合、ヨーゼフ殿下達の帝国での身分保証も本日をもって消滅いたしますので、速やかに御帰国なさいますよう。

ハント王国に対しての賠償問題と懲罰につきましては、後日、両国での話し合いで決めさせていただきますが、あなた方には帝国皇女に対する侮辱罪も加算されます。

現段階では仮釈放の処分となりますが、後ほど、罪人としての処罰をハント王国より通達させていただきますのでご了承ください」



舞台女優のように高らかと宣言をしました。

中々、癖になりそうですね。




「き、貴様!何を勝手な事を!なんの権限が有って私を非難している!!!」



湯気でも出るかのように真っ赤な顔で怒り狂っているヨーゼフ殿下。

感情がブレブレです。

彼は本当に王族でしょうか?

身分詐称されていると疑われても致し方ない有り様です。



「権限はありますわ。私はですのよ?」



あなた方よりも身分は上なのです。

そこのところ理解出来てますか?



「それがなんだ!!!同じ王族だろう!!!」



うつけ者です。

同じなはずがありませんでしょう。

帝国のが、なにを思って同格だと勘違いできるのですか?

婚約者に選ばれたから勘違いしたにしても酷すぎるでしょう。属国の王子だからこそ、邪魔にならない飾り物の夫になれると思って選んだというのに。



「侮辱…これほどの侮辱は有りません」



私、自分で温厚だと自負しております。

帝国皇族としては我慢強く気長な質だとも。

その私を怒らせるとは。



「何が侮辱だ!!!それはこちらのセリフだ!!!」



言うや否や、私に向かって拳を握り殴りかかってきました。

もっとも、控えていた衛兵によって取り押さえられましたが。



「何をする!!!はなせ!!!」



何をするか分からない珍獣を解放する人はおりませんわ。



「「「「ヨーゼフ殿下!!!」」」」



側近の者達も全員がお縄についたようです。

あら?

静かだと思っていましたが、綿菓子少女は既に取り押さえられ猿轡を装着させられておりました。


「ふーふがーー!ふーふーっ!!!」


どうやら形勢が圧倒的に不利だと漸く悟って一早く逃げ出そうとしていた御様子。

まともな神経ではありません。


ヨーゼフ殿下や側近達も猿轡を装着させられたようですね。

私は目線だけで衛兵に指示を促し、彼らをまとめて地下牢行きにしました。

本来なら、王族や貴族を地下牢行きにすることはありませんが、は別です。


まあ、自分達が政治犯だと彼らは理解していないでしょうけどね。

勘違いして帝国皇女との婚約破棄を宣言しただけ、とでも考えているのではないかしら?

そういう者達には幾ら説明したところで理解してくださらないでしょうし、納得も……しないでしょうね。あれほど不遜な態度を貫かれているのですから、それ相応の処罰は覚悟していただかなくては。

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