第26話 駄菓子の記憶

小学生の時、学校の近くにお婆さんが運営している駄菓子屋があった。消費税は既に導入されていたが、その駄菓子屋は消費税がつかない良心的な店だった。


大抵学校から家に帰って、ちょっ早で友達と遊ぶ時にはその駄菓子屋に寄っていた。買っていたのは「当たりハズレがある10円ガム」や「コンポタージュ」、そして友達と盛り上がるのは「金塊の形をした50円板チョコ」。金塊の箱を開けると最低で「10円」の「金券(但し駄菓子屋しか使えないやつ)」で、最高が「100円」。しかし、何故か友達と「ヤッベ~!!」となるのが「50円」。今でも謎だが、その頃の感覚としては、「50円で買ったのに50円返ってきた。タダのようなものじゃないか!!」という感じだったんだろう。


そして少し時間が経ち、高校生になった時、何かの用でその駄菓子屋の道を通ったら閉まっていた。後から聞いた話ではお婆さんが体調を崩して、すぐ亡くなったらしい。現在、駄菓子屋で売っていた物がスーパーで買える……税込で。そして50円よりも500円。500円より1000円…‥5000円…‥10000円。いやね、なんか大人になると『小さい喜び』を取りこぼすようになったなぁと。それだけです、ハイ。

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