第七話 「Следующая эра(次の時代)」

「(・・・・・)」


「へ~、それじゃ、河野さんは今、


 ロシア関連の記事とか追ってるって事か?」


太田が、隣の席にいる礼文に目を向ける


「いや~、どうなんですかね...


 河野総局長は、とにかく色んな場所に


 顔出してるみたいですから」


「・・・Earth nEwsに


 記事が掲載される時ってのはどんな感じ?


 私でも、すぐにいい記事書けば


 記事が掲載されるのかな~?」


「...どうだろうな~」


脇から話に入って来たゆかりに、礼文は


首を傾げる


「Earth nEwsは、"答えを出すところ"


 なんて事は、けっこう各局でも


 話題になってますよ」


「ああ、まさに、それは


 その通りかも知れないですね」


太田と少し離れた場所に座っていた


三咲の言葉に、礼文は同調する


「普通、一般の新聞記者の仕事ってのは、


 "事実"を一般家庭に届ける事が役割だからな...」


太田が三咲、そして室内の局員達に向かって


言葉を続ける...


「ただ、インターネットによって


 各国の記事が同じ様な記事になってる今じゃあ


 もう紙だけの記事を書いている新聞局の大半は


 読者を減らして、仕事の数は


 大幅に減って来てるからな...」


「そこで、登場したのが、


 "Earth nEws"って事ですね。」


「Earth nEwsは、今までの新聞やメディアが


 行っていた、事実を伝えるって事の一歩先、


 "事実に答えを出す"ってのが


 ウリなんですよね~」


「・・・・」


ゆかりの言葉に、軽く頷きながら


太田は更に話を続ける


「アラベスクや、日朝の広い報道網から


 集められた旬の情報を、


 Earth nEwsの編集委員が


 専門的な権威のある専門家に


 ニュースに対する考察の依頼をする事で、


 その依頼を受けた著名な専門家達は


 ニュースに対する"答え"を出す事で


 このEarth nEwsは他のサイトの


 一歩先を行った紙面を提供できるって訳だ...」


"ガタッ


「とりあえず、アロ!・コムソモーレツの


 局欄はすでに埋まっている様ですね...?」


「・・・三咲」


「それじゃ、私は少し、個人欄の記事のために


 外に出て来ます」


"ガタッ"


「・・・ま~た図書館か~?


 相変わらずロシアの文学とかで


 記事掲載されようとか思ってんのか~?」


席から立ち上がった三咲に、太田が


冷やかしの様な表情を浮かべる


「文学、とは私の体に流れる


 血液の様な物なんです....」


「でも、そんな事言ったって


 三咲さんの記事、まだアロ!・コムソモーレツに


 ほとんど掲載されたことが


 ないじゃないですか~」


「・・・・ッ」


"ガサッ"


ゆかりの一言が効いたのか、三咲は


自分の机の上からパソコン用の鞄を手に取ると


足早に局の入り口へと向かって歩いて行く...


「("文学"じゃあメシは食えねぇんだよな~)」


局の外へと出て行く三咲の後姿を


衝立の端から見ながら


「("ネタ"か....)」


隆和は、ネットでの"ネタ"探しに疲れたのか、


匿名掲示板のサイトに


誹謗中傷の書き込みを行っていた....


「(20022.1.15


  貴殿の作品、拝読しました。


  貴殿が彼について語っている文章は、


  大胆かつ細やかな文章で読み続けられるのですが、


  序文から中文にかけての下りで、


  突然私が想定した文章や流れと違った事に、


  驚きを通り越して、憤りを感じてしまい、


  あなたの作品に対する興味が


  薄れてしまいました。


  書き手の浅薄さ、俺普通と違ってカッケー、


  異端だろwwと言った様な鼻につく匂いが


  見え隠れして、どうにも馴染めませんでした。


  ....)」


"カタタタタタタタタタタタ....


「(よし...後は、)」


"カタッ!


【逝ってよし!】


「(こんなもんか....)」


"カタッ"


「(・・・・下らねえことやってねえで


  さっさとネタ探さねえとなー...)」


パソコンを打ち終えると、隆和は


一つ大きく息を吸い、それから吐き出す....

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